5話「菩薩というか首無し死体(3)」

彼女が望んだように、この汽車の窓から色々ぶん投げた。

そして、汽車から彼女を抱えて飛び降りた。



彼女を置いて旅に出る。







事態の変化から数時間後。

先程起きた黄緑色の乙女は、仕掛けた爆弾だったものを素手で回収していた。

「ん〜〜…………。やったのはいいけど、本当にいるとは限らなかったんだよね〜。」

「…………もしかして、やり損だったりする?」

今更感がある事を考えている間に回収し終えたらしく、ぺしゃんこだった袋が重く膨らんでいる。

「あ〜〜ちっちゃい袋なせいで余計に重い〜。」

「……お客様、危険物の持ち込みはおやめください。」

「…………。」

どうやら後ろから話しかけられたらしい。そのせいで反応が遅れてしまった。

声がした方を向く。

「……あ、ここの車掌さんか?悪いね、すぐに_________」





「は?」

気付けば、宙を舞っていた。





「ぅ゙っ…………!!」

背中に激痛が走る。どうやら線路に落ちてしまったらしい。

少し遠くからこちらへと汽笛が聴こえてくる。

(あぁ…………マズい…………!!)

直感が今から死ぬのだと教えてくれている。

車輪と線路が擦れる音、そこから生じた火花…………周囲は煙たくなっていく。

(…………これは……もう無理か。)

自分の最後は見たくない。だから瞼を下ろした。





___________肉体が引き裂かれるような激痛を感じた。









車掌室に戻る前に足元の肉塊を見る。

「はぁ…………全く、あの【菩薩】は……。」

【菩薩】の能力を止めるついでに【警告】と【生命】を車掌室に連れて行く事を決めた。



どの車両も床と壁と天井は肉塊が覆っており、天井から伸びた縄は首吊り死体を作っている。ここに乗っていた乗客は能力でも持っていない限り既に首を吊っているか殺人をして自死している事だろう。あと、首吊り死体から出てそのまま伸びた見知らぬ誰かの血管が触手のように座席に貼り付いている。

よく見ると、血痕も飛び散っているらしい。肉塊のせいでかなり見づらいが、工場で嗅げるような鉄臭いで分かる。

「うえっ……あ〜、臭いな。腐敗臭がする。あと鉄臭い。」

「…………嗚咽が出そうな臭いのフルセットか?」

(いや、腐卵臭が無いからフルセットではないのか。)

肉塊が床から天井を覆ってるのも、【車掌】である私からするととても嫌だ。

(本当に……凄いな、【菩薩】の能力は。)

(自殺と他殺まみれで…………あ〜〜掃除するとき絶対面倒くさい。絶対

肉塊の残りが貼り付いて取れない事とか……あるだろうな。)



あれから2両歩き、次の車両へと足を踏み入れた。

靴で肉塊を踏む度にぬちょりとした感覚を感じてしまうのがとても嫌だ。

(……【生命】)と【菩薩】は裸足なんだったか。【菩薩】はいいとして【生命】は嫌がるだろうな。)

なんて考え事をしながら、正面の方に見えていた【警告】の背後に着いた。

「おぅい、平気か?」

「…………へ、平気…………めだま、落ちちゃっタけど」

「お〜〜……やられてんなぁ。」

「後で一回死んどけ。それで本拠の方に飛んどけ。」

「や、やだ…………【生命】、【生命】が、いないと」

「分かってる分かってる。だから死んどけって言ったんだ。」

(この被害なら一度焼却した方がいいだろうし、丁度良い。)


(ま、火葬は出来そうにないけどな!ハハハ!)

【警告】が持っていた小型メガホンだけ回収して、【警告】を車掌室前にワープさせた。

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