3話「想定外」

輝星が頭を破裂させられた後。

術を解き、誕生日に化けていた姿から戻った【盲愛の双子】の片割れは医者を呼ぶフリだけして何もしていないもう1人を回収して近くをのんびりと歩いていた。

…………あぁいや、ただ歩いているのではない。暇を潰せそうなものを探して歩いているのである。

その様。まるで獲物を探す狐、揚げ足を取る狐、漁夫の利を得ようとする狐のよう。………………この2人の種族は狐だから先程の文が全て悪口にしかならないという話は置いておいて。

とにかく、この2人は適当にふらふらと歩いている。




「ん〜……ヒマ!」

「わかる。ヒマ!」

「なんかいいのない〜?」

「ないよ〜……。」

「そんな〜。」

「うえ〜ん。」

一歩前に出れば尻尾が揺れる。やわい風が通り過ぎ、少しくすぐったさを感じた耳がぴくぴくと動く。それの繰り返しだ。

「風がすごいね〜……。」

「ね〜……。」

「………………ここってこんなに何も無いの?」

「そ……そんな筈はないんだけど……。」

「大通りに出たら変わるかな?」

「お店はあるんじゃない?」

「行ってみよっか。」

「そだね〜。」

2人、下駄をカコカコと鳴らして歩く。









一方その頃、人形班は大通りに植えられた木の下にあるベンチで休んでいた。

「人形」は「人形師」の膝の上に座り、眠っているように見える。

人形なのに、胸元が上下している。

死んでしまった筈なのに、呼吸をする。

(なんだか、不思議。)

(…………ん?)

唐突に感じた視線に気付いた。

(こっちを…………見られてる……?)

膝の上に座っている「人形」は視線で目を覚ましたらしく、ガク、と身体が動いた。


それと同時に、相手も気付いたのかこちらに近寄って来た。


「……?」

「わ……おっきいお人形……?」

「……。」

「あ、お人形の持ち主さんこんにちは。」

「こんにちは〜!」

「ン?こんにちは。」

「この子お兄さんの?」

「ン。」

「へぇ〜……可愛いね〜。」

「ね、ね、お兄さん!」

「ン、なんですか。」

「お兄さんってどこの所属の人なの〜??」

「ン〜……。」



「誕生日サンのオトモダチです。」

「「……!!」」

その返答を聞いた双子の狐は武器を構え___________________






「い、いつから汽車の上に……!?」

「え……え??」

気付けば汽車の上に立ち、「人形師」、「人形」の2人と相対していた。

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