4話「狂人とキメラ」

まるで墨で塗り潰されたかのような色の汽車はごうごうという音を出し、車輪は赤と橙色の炎が輝き、煙突からは灰を散らしながら煙が噴き出ている。そして時々汽笛が鳴る。

……車両の窓を覗けば誰かがいるかもしれない。



「な、なんで突然こんなところに……?」

「…………さっきまでは大通りにいたよね?」

「その筈……だけど…………。」

「幻覚とか、そういうのかな。」

「…………そうじゃないと難しいかもね、この状況にするのは。」

双子は正面を向いた。正面には「人形師」と「人形」が立っている。

「…………あ、気付いた。」

「あら、やっと気付きましたネ?」

「……ここは、どこなの。」

「何処かへと征く汽車の上だけど。」

「どうやってここに連れてきたの?」

「誰とは言わないけど、能力で大通りを概念にしてその下に線路と汽車を隠した。…………って感じかな。多分。」

「さぁ……アイツらのやる事は“わからない”で纏めるしかないからな。」

「…………。」

「……お兄ちゃ、おうち帰りたい。」

「そっか。わかった。」

「…………お兄さん達。殺したら返してくれたりする?」

「…………うん。」

「まァ、返すくらいはしましょうかねぇ。」




互いに武器を構え、相手へと向ける。

ごうごうと音を立てる汽車の上は少し揺れているらしく、足場としては不安定だ。

そんな中、先に動いたのは___________









「道示す灯篭」

「…………。」

盲愛の双子の片割れが能力を使ったと同時に「人形」が前に出た。


「人形」は何もしない。その場に突っ立ったまま、その能力を受けた。

パン!と勢いのある大きな音が聴こえて「人形」の身体の一部が破裂した。

ように見えたが、身体が硬いのかそれとも再生能力あるのか、なぜか服が破れてそこから少し布が落ちただけで済んだらしい。

「………………3。」

何かを呟いた気がするが、3人には聴こえなかった。



「え……えぇ??」

「人形」は服が破れたというのに気にならないらしく、まだ同じ場所に突っ立っている。

「やっぱり頑丈すぎますねぇ、そのカラダ…………。」

「素材が硬いだけ……なんだよなぁ……。」

「…………ワタシいります?これ。」

「どっちでもいいけど…………でも、見たくない?何とは言わないけどさ。」

「……………………見たいですネ。」

「じゃ、離れといて。」

「ハ〜イ。」



「ぼくも戦う……!」

盲愛の双子の……恐らく弟の方。彼は遠く離れた「人形師」に狙いを定め、駆けた。

「人形」は気にしていないらしい。

「あれ、いいの。君のご主人様なんじゃないの?」

「…………貴方は自分の片割れの心配をした方がいいんじゃないの。彼の能力は特殊なものだからさ。」




駆けていった盲愛の双子の片割れは「人形師」の目の前で足を止め武器を振るった____________と同時に肉体が砕け散り、汽車から線路へと落ちた。

「あ…………なん……………うそ……。」

「人形」の肩の上からその様子が見えたらしく、生き残った盲愛の双子の片割れは膝から崩れ落ちる……なんて事はなく。武器を構え直して「人形」へと振るった。







_______と、同時に「人形師」が「人形」に攻撃を数発放ち、当たった。

その瞬間、「人形」の身体が裂け、中から現れた獣のような存在が、盲愛の双子の生き残りを骨と肉すら残さず喰らってしまったのだ。











「人形師」と「人形」は、中から蓋を開けてもらい汽車の中へと入った。

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