2章『栄光を信じる』

1話「それは、一瞬だっただろう」

黄金こがね色の草花が風に吹かれて揺れる。

その草花が広がる草原にて1人、寝転がっていた。

(……ここは静かでいいな。)

目を閉じて、昔の事を思い出す。





昔々、まだ神がマトモに信仰されていた時代の話。その時代から、俺は生きていた。神は上、人は下。そんな現実に嫌気がさして、俺は勇者になる事を夢に見た。

その為、10歳くらいの頃からずっと修行をした。剣術修行、知識を入れる為の読書…………魔術も使えるようにした覚えがある。




それから数年、俺は自他共に認めてしまうくらいには勇者に成れていた。

これは、日々の修行と中央にあるギルドの依頼をこなしたからである。きっと、幼少の頃に諦めていたら、ギルドの依頼で魔物退治やらなんやらをしていなかったら…………きっと認める事は出来なかったし、認められる事も出来なかっただろう。



勇者になって、そろそろ神と人の関係性をどうにかしようと思った。

だから立ち上がり、鎧を着て、剣を持って神の元へと向かった。








使いの者達とは対等に戦えたけれど、神には敵わなかった。

まぁ、結論だけ言うなら負けてしまったのだ。その事実は悔しかったし、努力は何をしても叶うわけではないと知った。

でも、その下にいたであろう組織、『五情人』は潰す事が出来た。

…………あの脆そうな関係性に軽くヒビを入れたらあのザマだ。

一番上の立場である【標識】は偽りのまま生きる事を願った。

次に【盲愛の双子】は【標識】を本当に盲愛して全てを信じてしまった。

その次に【死体】が【標識】を愛した。

一番下の【誕生日】は混乱の前に逃げてしまったから被害はないけれど…………。

それでも内側から壊れてしまったのは確かだろう。

だから……今は『五情人』ではなく『四情人』と呼ぶべきだろうか。







そういえば、気になる事がある。

昔からあるあの噂。あのというあの噂。

あれは『五情人』のうちの誰かがやった事らしい。…………あれは、一番上の立場である【標識】がやったのか?それだけが気になる。





そう思ったところで目を開いた。

俺は昔にあの出来事を起こせた事だけは誇りに思っている。その感情に偽りは無い。

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