とけゆくアフォガート

徳岡暁奈

第1話

飛びそうなスカートの裾を押さえつつドリームキラーはわたしのことか


ソルフェジオ周波数に似た愛猫の香りを残したままここに来た


バランスの調整装置の点滅に手を触れながら窓際の席     


身体からことばがはぜてしまいそう 珈琲豆の重力のおと


光るほど切なさがある 手のひらにこぼれるほどの熟れた桑の実


ひらひらと珈琲豆が咲いていて、そうだ肺腑はいふに翼があった


アフォガートとけゆく速度で天秤の「じぶん」の方を重くしてゆく  


カフェインの舌下吸収目をあける6秒前と今との明度  


ウエストをキュイとしぼったワンピース口紅をすこし濃く塗り直す  


炎天の路面電車が通過するまじないのあと開く踏切

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とけゆくアフォガート 徳岡暁奈 @akina32

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