第3話 冴冬➀
その日も何事もなくいつも通りに一日が終わるのだと思っていた。あれを見るまでは
柊が転校してから2週間が経とうとしていた。
「おはよーっす!涼!」
ハヤシが教室で話しかけてきた。
「おう、おはよー」
今日はあまり元気が出ない。
「あれ?お前元気なくね、てかタケモトどこだかしらねーか?」
俺が元気の出ない理由はそれだった。
なぜならタケモトは今日なんの連絡もなしに待ち合わせ場所に来なかった、今までそんなことないしあいつに限って体調崩すなんてことも考えられない。先に学校に行ったのかと探してみたけど見つからない
「いや、朝から待ち合わせ場所に来なくてよ。学校も探してみたんだがいねーんだわ。もしかしたら最近寒くなってきたし風邪とか、?」
ハヤシが笑いながら応えた
「おいおいおい、タケモトに限って風邪はねえだろ。あるとしたら寝坊か食いすぎて腹壊してるかの二択だな」
たしかにそうだなと笑いながら返したが内心不安だった。
タケモトの訃報が知らされたのはそのすぐ後だった。
タケモトは学校近くの公園で顔がわからなくなるほど殴られた姿で見つかったらしい。犯人はまだ捕まっていない
警察は無差別殺人と判断し犯人を探しているらしい。
その日は全校集会のみ行われ、保護者に引き渡されそのまま帰宅した。
家に帰ってからはひたすら部屋にこもり泣いた。涙が止まらなかった。タケモトの明るい笑顔や誰にでも気さくに話しかけるところなど思い出したらキリがない
なんであいつなんだよ、あいつが何したっていうんだよそう考えたら居ても立っても居られなくなり止める母親を無視して家を飛び出した。
「誰が犯人であろうと決して許さない」
この言葉を胸に俺は犯人を探すことを決心した。
「おい涼!」
ハヤシが話しかけてきた。
「ハヤシ?なんで外出てんだよ」
今日は一日外出禁止令が出されていた 近くに犯人がいるかもしれなく犯人の動機がわからない今は同じ中学校の俺らは危ないからだ。
「いやお前もだし なんかタケモトのこと考えてたら居ても立っても居られなくなっちまってよ。あいつが殺される理由なんてないだろうし……」
こいつも俺と同じ気持ちなのか そうだよなあいつが殺される理由なんてないんだよ。だから次の被害者が出る前にも一刻も早く犯人を探す必要があった。
「なあ。俺あいつ殺した犯人を探そうと思ってるんだ どうせ無理だってわかってるしなんの手掛かりもない。でもこのまま黙って犯人が捕まるかわからない日々を送るのは嫌なんだよ……あいつのためにも」
俺はハヤシに打ち明けた。
「お前どんだけ危険なことかわかってんのか?」
「ああわかってるよ。でも嫌なんだ、このままあいつのこと殺した犯人がのうのうと生活してるこの現状が」
ハヤシは一瞬躊躇ったように見えたが
「俺も手伝わせてくれ」
ハヤシから出たのはそんな言葉だった。俺はとても嬉しかった ハヤシを巻き込みたくない気持ちもあったがあいつは情報に関してとても強い。絶対に俺一人でやるよりも効率が上がる
「ありがとう。ほんとに助かる」
俺たちは話し合った結果柊も誘うことにした。危険なことに巻き込んでしまう結果にはなるがあいつは頭がいい事件解決に俺たちの幼稚な頭ではなんの役にも立たないからだ。
「柊の家ってほんとハヤシの家に近いんだな」
おれはハヤシに案内されて柊のいえの前まで来ていた
どこにでもあるような普通の一軒家だった
ピンポーン
チャイムを鳴らす
出てきたのは40代前半くらいのおじさんだった。メガネをしていてスーツを着ていた 清潔感があってどことなく柊に似ている
「ん?柊の友達かな?今日は外出禁止のはずだけどどうしたの?」
おじさんは少し驚きながらも優しく問いかけてくれた。
「いやあの、どうしても柊に伝えたいことがあって 柊と今少しでも会えませんか?」
俺たちはいち早くタケモトを殺した犯人を捕まえたかった だから今日柊と会えなかったら二人で先に捜査を始めようと話していた。
「涼とハヤシ?」
玄関の奥から柊の声が聞こえてきた
「ああ、柊 この子達がどうしても伝えたいことがあるらしい」
お父さんが説明してくれた。
俺たちは少し歩いてN公園に着いた
N公園とはハヤシ、柊の家近くにある公園だ この地域は俺たちが通っている中学校を中心に東西南北四つの公園がある。
東→E公園 俺とタケモトの家の近くの公園
西→W公園
南→S公園 学校から一番近いそしてタケモトが殺された公園
北→N公園 ハヤシ、柊の家の近くにある公園
「ねえ二人とも話って何?」
公園のベンチに座ってどう誘おうか考えていると柊が問いかけてきた
「今朝タケモトが殺された話聞いただろ?それで俺どうしても許せなくてタケモトを殺した犯人のこと探し出そうと思ったんだ。それでハヤシにも協力してもらうことになって柊にもって……」
そう言いながら考えていた 俺たちはタケモトと長い間一緒にいたし絶対許せないという強い思いがあるけど柊はまだ少ししかみんなと過ごしていないタケモトとだって他よりは仲良くしていたけれどこんな危険な提案乗ってくれるのか?と
柊からは意外にもすぐ返事が返ってきた
「もちろんだよ タケモトは僕がクラスに入って一番に話しかけてくれた恩人なんだ」
そこから俺たちはタケモトを殺した犯人を探すための作戦を練り始めた。
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