第2話 初霧②

放課後サッカー部の練習に行こうと校舎を歩いていたら空き教室でタケモトと久保ちゃんが話しているのがみえた。

「やべ!タケモトに結局宿題見せるの忘れてた。あいつ怒られてんのかなあ申し訳ねえな。」

そんなことを考えていたらふと後ろに気配を感じて振り返った

「うわ!びっくりした。なんだよ?もしかして校舎迷ったのか?」

そこには、柊がいた。

「うん。サッカー部の見学に行こうと思ってたんだけど校舎から出られなくなっちゃって。」

こいつ、サッカーなんてできるのか?と思いつつもサッカー部の団員が増える事は素直に嬉しかった。なぜならうちの学校のサッカー部は弱小。人数も少ない上に監督がろくに指導してくれないからほぼ部長のタケモトに頼りっきりで練習をしていた。

「おれ涼って言うんだけど、ちょうど今から練習するとこだから一緒にいこーぜ」

柊は優しく微笑みながら答えた、

「ありがとう。助かるよ」


「ここがいつも俺たちが練習してるグラウンドだよ。」

俺は柊にグラウンドを紹介しながら荷物を置いた。まだ部活のメンバーは全員揃っていないみたいだ。

「ここに座って今日一日見学しててよ!まあ部員も少ないし弱小だから見てて面白いものでもないと思うけど……」

 柊を近くのベンチに案内しながら自分の部活の弱さを考えたら情けない気持ちになった。

「涼?くんだっけ、お言葉に甘えて見学させてもらうよ。タケモトくんは当分返ってこなそうだったしもう練習始めちゃえば?早く見たいな。」

 タケモトと久保ちゃんの話聞いてたのかな?これは相当怒られてるみたいだなー、戻ってきたら慰めてやるか。柊の一言に押され俺たちはひと足先に練習を始めることにした。


「こっちこっちー!」

 ハヤシが俺のパスを待っている。

「ハヤシ!あとは頼んだ!」

 俺はゴール付近にいるハヤシに向かって思い切りパスした。

「おう!まかせろ!」

 そう言ってハヤシは俺のパスを受け取りそのままゴールに……

「シュート!!!」

側で見守っていた後輩たちから声援が上がる。柊も笑顔で拍手してくれていた。

「見たか?俺のシュート!たまには俺もやるもんよ」

 自慢げにハヤシが語っている。実際のところ俺、タケモト、ハヤシはこの部活の中でトップスリーの実力をもっていた。この試合だって五対五のゲームみたいなものだしこの部活の中でどれだけ上手くたって他の中学生に比べれば断然弱いのは知っていた。でも俺は密かにプロサッカー選手になることを夢見ていた。


「おーい!ごめん!遅くなった。」

 タケモトが戻ってきた。よっぽど走ってきたのか顔が赤い。

「おせえよタケモト、どんだけ久保ちゃんに怒られてたんだ?」

 ニヤけながらタケモトをからかった。

「しょうがないだろう、宿題忘れちまったんだから。次からはぜってー忘れねえ」

 案外元気そうなタケモトをみて安心した。

タケモトが合流した後また少し練習し今日の部活は終わった。

「おい、見学してみてどうだった?入りたくなったか?」

 タケモトが柊に問いかける

「うん、すごく楽しそう。明日先生に入部届けもらってくるよ。」

「ほんとか!!嬉しいぞ!」

 タケモトもハヤシも他の部員も喜んでいた、もちろん俺も嬉しかった。


 帰り道、俺たちはタケモト、ハヤシ、柊、俺の4人で帰った。

柊は元々通っていた中学校でサッカー部に入っていたらしい。ここに引っ越してきたのは親が再婚するためらしく今まで父親と2人だったから新しい母親ができてとても嬉しいと話していた。それ以外にもたくさんの話をした、俺たち四人はとてもバランスがいいように感じて居心地が良かった。

 ハヤシとの別れ際柊とも別れると思ったが用事があると言って俺たちの家の方まで一緒に帰った。結局タケモトと離れた後も用事の場所につかないようで俺の家の前で別れることになった。

「じゃあな!柊。また学校で」

「うん。またね」

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