君と僕と雪
林黙雪無
第1話 初霧➀
秋も過ぎ、手が悴むように冷えた風を感じるようになってきた。涼は冬が好きだった。窓を開けて広がる銀世界をみたらどんなに辛い朝も悴む手のことも忘れさせてくれた。
「おはよう!涼!」
クラスメイトのタケモトが話しかけてきた。
「おはよータケモト。お前昨日の宿題やってきたのか?また久保ちゃんに怒られるぞ」
久保ちゃんというのは国語科の若い先生だ。普段は優しいが宿題を忘れると途端に怖くなる。よくタケモトは呼び出されて怒られていた。
「やべ!まじで忘れてた、ほんとにやばい。涼たすけてくれよー!」
「やだよ!なんで俺が毎回助けなきゃいけねーんだ。また久保ちゃんに怒られてこい。」
「嘘だろー。でもお前に頼り過ぎてるのも事実だし諦めて怒られるよ……」
タケモトは頭は悪いがとても素直でいいやつだった。俺たちは同じサッカー部に所属している。3年生が引退し、新しい部長を決める際も満場一致でタケモトに決まった。俺もタケモトを推薦した1人だ。だから今はこんなに冷たく言ったが後で必ず宿題見せてあげるつもりだった。
昇降口について一番にハヤシが話しかけてきた。ハヤシも同じクラスメイトでサッカー部に所属している。噂好きで口も軽いが便利な情報家だ。
「おい!聞いたか?涼、タケモト!」
「なんの話だよ。そもそも今学校に来たのに聞いてるわけないだろう?」
俺とタケモトはどうせいつものしょうもない噂だろうと考えながら軽くあしらい気味に答えた。
「これが、ビックニュース!!今日転校生来るらしいぜ!しかも俺たちのクラスにだよ!」
俺とタケモトはいつもなら止めない足を止めて興奮気味に答えた。
「おい嘘だろ?転校生ってそもそも珍しいのに今冬だぞ?普通新学期とかじゃねーのかよ」
「いやそれが急に親が転勤になったとかでこっちに越してきたらしい。俺の家の近くに越してきたんだけどほんの2、3日前だよ。ほんと驚きだよな。」
2、3日前って、そんな早くに手続きとか終わるものなんだなーと感心している間に教室に着いた。教室はもう転校生の話で持ちきりだった。
「ねえ、男の子かな?かっこいいかなー?」
「女であってくれ!可愛い子!来てくれ!」
みんなが期待の目をしながら楽しそうに話している。俺はいつもの席に座りながらタケモトに見せる宿題を探していた。
「ガラガラガラ……」
ドアが開いた。みんなの視線が教室の入り口に集中する。
まず担任が入ってきた。その後に入ってきた1人の少年、そして俺はその少年に目が釘つげになった。
「綺麗……」
ふとそんな言葉が漏れるような美貌の少年だった。背は170センチあるかどうかくらいで痩せ型とても華奢だった。
「今日から転校してきた森本柊くんだ。急な紹介になってしまったがみんな仲良くするように。」
「森元柊です。よろしくお願いします。」
とても綺麗な声だ、なんて思っていたら
「柊!よろしくな!俺タケモトって言うんだよ。今サッカー部の部長しててよかったらお前も入れ!仲良くしような」
またやってるよとみんなの視線が送られる。タケモトはそうゆうやつだ。そうゆうところがみんな好きだったのかもしれない、そしてあいつを追い詰めてたのかもしれない。
柊は教室の後ろの空いてる椅子に座ることになった。朝のホームルームが終わるや否やタケモトに負けじとみんな柊の周りを囲んで話しかけていた。
「柊くん。どこから引っ越してきたの?」
「もっと北の方。親が寒いのがすきなんだ。」
綺麗な笑顔で答えていた。落ち着いていてとても優しそうな笑顔。なぜかその顔がすこし寂しそうに感じだのは自分だけなのだろうか……
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