大好きなお姉ちゃん







あの一件以降もお姉ちゃんが中学でいじめにあっていたのは知っている。お姉ちゃんは私に教えてくれないけど、友達が教えてくれた。でも、何も言えなかった。声を掛けることが出来なかった。

そうしたらお姉ちゃんは高校に行くことになって、私は心の底から安心した。

もうお姉ちゃんがいじめられなくてすむと。

今だってお姉ちゃんはこんなに笑ってるんだから。毎日幸せなんだろうと思っていた矢先だった。



一件の通知が鳴った。

開いてみるとそこには一言。


『嘘つき』



と書かれていた。

それからが地獄の始まりだった。

それから毎日、手紙やメッセージが送られてきた。

内容は、お姉ちゃんのことだった。

まとめると、姉は今まで人をいじめてきたのに、凝りもせず標的を変えては、いじめ続ける。妹には見せない一面を。

ということだ。

お姉ちゃんが人をいじめるはずがないし、私で遊んでいるんだろう。と無視していた。

それをいいことに、手紙たちは送られ続けた。ついには学校の下駄箱にさえも。


誰が、何の目的の為に?


私は紙に一言。

『そんなことするはずない、あなたは誰?』

そう書いて、私の下駄箱に入れた。

すると翌日も手紙が入っていた。

『私は貴方の姉にいじめられた女。あの女の被害者よ』

意味が分からないので無視を決め込んだ。

しかしそれが何ヶ月も続くと流石に辛い。


よくもまあネタが飽きないわね。その瞬間ほんとに一瞬だけその話が本当なのでは、と脳裏によぎってしまった。


その数日後だった。

雨の中下校している最中。カッパを着用した女が私に声をかけた。


「死に損ない」


「、、、なに、を」


その女は不気味に笑いながら、続ける。

「あの日、アンタさえ死んでいれば、あの女が今のようなおぞましい姿になることはなかった。全部、全部アンタのせいよ」

初めて、こんな感情に襲われた。

憎悪と憎しみ、そして疑念全てが混ざった感覚だった。

「勘違いでしょう。私のお姉ちゃんがそんなことするはずないんだから」


「ふはっ、貴方との誓いを破っていることも知らないような人に何が分かるの」

ガツンと殴られた感覚だった。

女はそれだけ言って、何処かに消えた。

正確に言えば、私が倒れ込んでいる隙にいなくなった。

私を、絶望させるには充分だったから。

嘘だと信じたかった。普段なら信じていただろうな。でも生憎、私はお姉ちゃん程強くないもんでして。

あの日、誓った約束が私をここに留めてくれていた。私たち姉妹の形だと思っていた。


だけどそう思ってたのは、私だけだったんだね。


「ごめんね。お姉ちゃん」





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