嘘と愛と何度でも








「菜乃香!」

菜乃香が川に飛び込んだと聞いた。

どうしてまた?約束したのに。何のために?

混乱の嵐がやまない。外の雨も徐々に強くなるだけ。


「本当にどうして、、なんで」


「お姉ちゃん、?」

「菜乃香!?大丈夫?」

「うん、、お姉ちゃん、ごめんなさい。約束破っちゃって、」

「菜乃香が無事だったなら良かった」


しばらくして菜乃香が急に言い出した。

「お姉ちゃんさ、私に隠してること、ある?」

「え?ないけど」

「約束」

「ああ、」

菜乃香の表情と声、そして『約束』という一言で全てが分かってしまう私は姉失格だろう

「ごめん、ごめんね菜乃香。私、ずっと昔から約束、破っちゃってたみたい」

菜乃香の性格だ。私が破っているのを知ったら、菜乃香だって破ろうとするに決まってる。どうして、そんなことも分からなかったのかなぁ。

大切な妹なはずなのに、

守ろうとしてたはずなのに、

私が命を奪うような真似をしてどうする。


自分の不甲斐なさに1発殴っておくだけじゃ済まない。しかし、今何度もやるのも、、と考え、とりあえず1発、自分の拳を入れた。


「お姉ちゃん!?」

「ごめん、菜乃香。私、菜乃香を守るとか言って全然守れてなかった」

「お姉ちゃん、、」

「こんな私を許さなくていい。姉だなんて思わなくていい」

そう、約束を守れない姉なんて、いない方がよっぽど、

「馬鹿!お姉ちゃんの分からずや!言ったじゃない、あの日、たった1人の家族だって!」

「菜乃香、、、」

「私だって約束破ったんだから私たちは同罪なの。だから、もう一回、誓い合おう?」

「菜乃香、、、そうだね」

ああ何年ぶりだろう。あの日だって、どれだけいじめられたって涙なんて出てこなかったのに。

どうして今なんだろう。


「何回でも、誓い合おうよ」


ああそうか。菜乃香は気付いてたんだ。私の嘘を昔から。それを知らないフリをしてくれていた。


やっぱり私たちは同罪だ。



『ずっと一緒にいられますように』

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