家族と過去
「お姉ちゃんまた勝ったんだってね!」
「え、ああうん」
「学校でもお姉ちゃんの話題でいっぱいだよ!」
「ぇぇ、嬉しいけど照れるよ」
「えへへ、じゃあ行ってくるね!」
「うん、行ってらっしゃい」
夏休みに入り、試合が始まった。今までの成績的にも、私は試合に出ることが出来たし、勝ち続けていた。
だけど、勝てば勝つほど、みんな私から遠ざかる。それでも私は勝ち続ける。
葉菜花の笑顔の為に。
元々、私は両親と葉菜花と4人で生活していた。生活していたと言っても、ただ、その場にいただけに過ぎない。父は暴力をふるってくるし、母が作るご飯に私と葉菜花の分はない。要するに親からの虐待を受けて育ってきたのだ。そんな生活に終止符を打ったのは私だ。やはり馬鹿だったと今でも思う。父が暴力をふるうのは私だけだったし、母がご飯を作らずとも私が菜乃香の分を作れば、生活として成り立っていた。そう、私さえ我慢していればこの暮らしは続いて、稼ぎだけはいい両親の下、菜乃香は傷付けられることも無くすくすくと育っただろう。
そんな生活が壊れたのは、私の身体がコーチにバレた時だった。あの時のコーチの顔は今でも覚えている。全身から血の気が引いて真っ青な顔をしていた。私は大丈夫だから秘密にして欲しいとお願いをしたが、無駄だった。すぐに私は病院に連れて行かれ、両親は警察に捕えられることになった。病院で検査を受けると、何故か入院する羽目になった。菜乃香や祖父母が毎日のようにお見舞いに来た。私は元気にバドミントンをしているのに、何処が問題だったのだろうか、今でも分からない。ただ、その後泣きながら抱きついて、「気付いてあげられなくてごめんね」と言うコーチに、何も感じなかったことを覚えてる。今覚えば私も泣いて、「気付いてくれてありがとう」と言うべきだったのではないか、と時折考える。
しかしそれは不可能だ。両親が捕まることと天秤にかけると私の怪我などどうでも良かった。私が退院して学校に行くと案の定というべきかいじめられた。私だけなら、どうでも良かった。今までみたいに我慢をすれば良かった。
だけどそうも言ってられないことが起きた。
菜乃香が自殺未遂を犯したのだ。
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