第7話
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それは九七式戦闘機をベースに作られた、二人乗りの練習機でした。言うまでもなく九七式よりも性能が劣り、非常に使い古されています。わたくしは訓練時からペアを組まされていた、永ヰ《ながい》という男とその機へ搭乗することになりました。永ヰはわたしよりも一つ年下の、十六歳の青年──青年と言った瞬間蠅原は息を呑んだような表情を見せ、すぐに言い直した──少年でした。レンズの厚くて丸い眼鏡をかけ、まだ顔に幼さの残る、背の低いどこか
わたしはその永ヰと一緒に、用意されていた練習機へと向かいました。乗り込む直前にも、互いの目を見つめて軽く頷き合っただけで、言葉は交わしませんでした。我々には、それだけで充分でした。わたしは前方の操縦席へ乗り込み、永ヰは後方の複座へと乗り込みました。二百五十キロの爆弾が一つではなく二つ、左右の翼の下に一つずつ溶接されていた点も、前回とは異なりました。理由は言うまでもありません、特別攻撃の破壊力を増すためです。
ところで、一体なぜ二人で搭乗したのかと言うと、練習機の複座には、機関銃が装備されていたからです。座席を三百六十度回転し、機銃掃射することのできる、旋回式の機関銃です。しかしそれは何も、我々特別攻撃隊員が前回に比べ、優遇されたからではありません。単に特別攻撃の成功率と効果を少しでも上げる目的で施された、『処置』に過ぎませんでした。ですから前回同様に無線機が搭載されていないどころか、現地到着までの援護と事後の報告を兼ねた戦闘機さえも、そのときは飛ばないとのことでした。戦闘機よりも格段に機能の劣る練習機と、合計で五百キロもの爆弾を吊り下げているという劣悪条件とは言え、前回とは違って武器を搭載しているために、援護用の機がないことにはまだかろうじて納得がいきました。がしかし、報告用の機がないことには納得がいきません。無線機がないからです。それで一体どのようにして敵艦への突撃を確認するのだろうか? そのような疑問が否応なしに浮かんできます。しかし全ては上層部により、既に決められていることなのです。いくら抗議してみたところで、何が変わるわけでもありません。わたしはそのことを経験により知っていたために、あえて
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