第9話 それぞれの善

ニグリスは戦闘を放棄して悪人の方へと向かった

するとそこにシャルと足元がおぼつかないローベルが到着した。


「え……あれって……嘘でしょ…?

私たちが今まで追ってた青い死神って…」


「チッ、一足遅かった…!」


するとローベルは苛立った顔を見せ、大きく息を吸った。そして


「ニグリスゥ!!!!!!」


大声で叫んだ。するとニグリスやルナ、ハインズが一斉にローベルの方を向いた。


「ローベル…!!!待っててくれ、あと少しだから!」


ニグリスは優しく微笑み、嬉しそうに言葉を返した。ローベルは怒り、ニグリスを睨んだ


「ニグリス、シャルに聞いたぜ…?

大勢殺したんだろ?しかも現在進行形でな!人殺しはさぞ楽しいんだろうな!」


「…楽しいと思ったことはない。ただこれは、君のためなんだ。」


「…そんなに人を殺してぇならよ、俺と戦って人を殺す覚悟を見せてみろよ!」


「…俺は、君を守るために!」


「うっせぇ!」


ローベルは剣を構えてニグリスに向かって行った。

ニグリスはローベル相手だと受け流すだけでは不可能と分かっていたため覚悟を決めて、全力で気持ちに応えることにした。それに合わせてルナとハインズは後ろに下がった。


「2人とも、これはどういうことなの?」


「…わからないです。ただ、死神の正体が…ニグリスってこと以外……」


「大先輩、俺たちが追ってたのって…ずっと…先輩だったんスか?ずっとそばにいて…隣で支えてくれてた…あの優しい炎の騎士が…青い死神だったんスか…?」


「ハインズ君……もうきっと、ニグリスは覚悟を決めてたのよ。あの夜、ローベルが眠り始めてから…ずっと、1人だったのかもしれないわ。」


「でも…!!すぐ近くに俺たちがいたじゃないッスか…!なのになんで…!!」


「…泣いちゃ、だめだよ…今泣いたら…あの死神を認めたことになっちゃうから…!」


「…今はただ、ローベルを信じて、ニグリスが帰ってくるのを、待つだけよ。」


シャルは泣きそうになっている2人をただ黙って肩に触れて、慰めていた。

ローベルはニグリスと剣を交え始めた。


「おいニグリス…テメェどんな頭で考えたらそんな行動に繋がるんだよ…テメェがいつも言ってた善悪はどこに置いてきた!!」


「ローベルより賢い頭で考えた結果だよこれが!起きてそうそう説教かよ!いっつも仕事サボってたのにこういう時ばっか先輩面か?」


「あぁそうだよ!俺は先輩だよ!その先輩がテメェに教えてきた事忘れたのかよ!!善は人を助け、悪はそれを傷つける奴のことだって言うのをよ!!」


「だからその傷つける奴を消したらもう善悪何も無くなるだろうが!!全部、お前が傷を負わなくなるためだよ!!!」


「やっぱりな……お前は俺が寝てる間に脳みそ捨ててきたのか?あ”ぁ!?そのテメェが今やってる善の行動とやらは悪なんだよ!!」


「そのぐらい知ってる!!だから…俺で終わりにすんだよ…!」


ニグリスはローベルを蹴飛ばして素早く悪人の方へ向かい、1人2人と燃やし始めた。ローベルはすぐに体勢を整えニグリスを止めた。

その繰り返しがしばらく続いた。

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