『ぷーと世界の終わり』



⚠️ この物語は、「くだらなさ」や「笑い」に込められた人間の強さを表現しようとした話です。それ以外の意図はありません。






地球が終わろうとしていた。

原因は人類の「深刻化」。みんなが真剣すぎて笑いが消え、心がどんどん重くなり、地球まで重力が強くなってしまったのだ。


国連は最後の手段として、とある日本人を選び、「子どもたちが心の底から笑う『しょうもないこと』」を極めさせることを決めた。


選ばれたのは、引きこもりの冴えないおっさん・タカシ(42)。

彼は幼い頃、「おならぷー」というギャグポーズで全校生徒を笑わせた、某SNSや某SNSでも伝説を持つ男だった。

だが大人になるにつれ、笑われることを恥だと学んだタカシは持て余していた『しょうもなさ』を封印し、『まともな大人』になろうと努力していた。


「そんなことは君には必要ない。君が選ばれたのは、誰よりも『しょうもないこと』を極めることに優れているからだ」


黒服の説得に深く傷つきながらも、努力してきたタカシには、双肩に人類の存亡がかかっていることを正しく理解できていた。


ありとあらゆる訓練が行われた。体育館に子どもたちを集めて、ステージで珠玉の一発ギャグを披露するタカシ。しかし、子どもたちはまばらにしか笑わない。


「もういっそ、自由にやってみてくれたまえ」


うっかり匙を投げたかのような博士の言葉に、タカシは子どもたちを見渡す。

そして、手をあげて叫んだ。

「何か、言いたいことがある人!」

すいっ、と少女が手をあげた。タカシが当てると、少女は三角座りのままで大声を張り上げる。

「あのね、おじさん。有名な人って聞いたんだけど、本当?」

「おじさんは、有名な人なんかじゃないけれど、すごい使命を与えられてしまったおじさんだ」

「おならぷーって……」

そう言っただけで、子どもたちはくすくすと笑い転げ始めた。

「おならぷーってして、有名になった人なんでしょ?」

「そ、そうだ。おじさんはそれで全校生徒を笑わせたことがあるせいで、こんなことに巻き込まれることになったんだ」

子どもたちは続々と笑い転げ始めた。ケタケタおかしそうな声を聴いていると、タカシまでなんだか笑えてきた。なんなんだ、この状況。

「おじさん、その、ぷーってやつ、してみて!」

タカシは必死だった。笑いながらも、心は必死だったのだ。もう間もなく、世界は崩壊すると知っているから。

だから藁にもすがる思いで、少女のそのしょうもなすぎる要望に、全力で応えた――。


その瞬間、子どもたちは火がついたように爆笑した。体育館を揺らした笑いはいつまでも収まることなく、やがてそれに引きずられるようにして、ステージを見守っていた係員たちが笑い出した。じきに、中継を見守っていた地球中の全人類までもが、なんとなくおかしくなって笑い始めたのだった。


世界はそんなしょうもない笑いに包まれ、重力が軽くなり、地球の崩壊が止まった。


タカシによって世界は救われ、人類はようやく気づいた。深刻すぎるのも、ほどほどにしておこう、と。

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