静止画

大森豊寛

静止画

恋人は袖のフリルをひらひらとさせて花見はまだ早いのに


家族葬のように切符を二人分胸ポケットに入れて歩いた


動画だよって言ったらきみは静止画の中で桜をこぼしはじめる


粉雪を歌う彼氏にしゃかしゃかとなぜマラカスを振る春隣


焼き鳥のタレか塩かで揉めながら今日は3回あいこが続く


リンスインシャンプー いつも別れ話は優しさの言語が違う星から


回想はカメラロールに追いついて葉桜に緑が増えていく


八年の空白はゆるく縁取られ今年から払う固定資産税


ソルティライチやルーズリーフが置いてあるコンビニへ小雨のなかを歩いて


香典の袋を買った きみといつか深夜のさくらトラムに落書きをする

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

静止画 大森豊寛 @morio_book

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

参加中のコンテスト・自主企画