第6話

本を毎日読んでいた。他にすることがないから。本当にすることがないから。


なんだかんだ言って、魔法の本は面白かった。光の魔法で光をつけられるようになったので生活がより便利になった。水と火は風呂場で試した。どちらも使うことは出来た。が、まあ日常的にはこの場所では使う必要はない。


闇はよくわからなかった。試してみたものの、影が少し暗くなる以外は危なっかしくて試せるものが少なかったり、条件が厳しくてできなかったりした。他の人がいることが条件であることが多かった。樹もここでは試せない。


光も、回復系は使うことがほとんど出来なかった。まあ当たり前である。お試しでやってみると何となくきれいな光が出てきたりはした。


錬金術の本もあった。まあ材料がなかった。作り出すとしても、さすがに見た目が分からないとだめらしく無理だった。


とりあえずすべての本が読み終わった。1週間かからなかった。MPの増やし方、みたいな本もあって試してみようとしたもののよく分からなかったりした。


気に入ったもので二週目を読んで暇をつぶす事にした。そのころ、森で少し騒がしい時が増えた。極稀に人の声がするような時がある。大抵は気の所為だと思って受け流しているが。


三週目にさしかかる時だった。かなり近く、たぶん下のあたりで物音がした。その時はたまたま絵本を読んでいた。コンプリート欲で最初に読まないことにした物を結局読むことにしたのだった。他の本は運よくしまってあった。


二階に何かが上がってきた。こちらまで歩いてきた。いつもベットで本を読んでいたから、そこまで。正直驚いて声が出なかった。


「大丈夫。君を傷つけたりはしない。君はこれから国に保護されることになっている。」

「あの」

「大丈夫。大丈夫だ。」


多分騎士みたいな格好をしている。まあ異世界らしいという感じがある。多分男だと思う。顔見えないけど。そいつは後方に少女発見の報告をしている。


「えっと」

「大丈夫、大丈夫」


私は少し困惑しながら、一番言うべき言葉を伝えることにした。できるだけ子供らしく。


「わたしにさわると、たぶん死にます」

「は?」


今度はあちらに困惑された。困惑したいのはこっちである。いきなり甲冑で顔も見えないのにやって来て今のところ大丈夫しか言っていない。何が大丈夫なのやら。甲冑なかったら完全に不審者である。いやあっても不審者だな。




その後色々あって、なんだかんだで詰所に連れて行かれた。まあ、まだ罪人と決まったわけでなく、子供なので待遇は良かった。が、まあおそらく詰所ではある。夜になると何か嫌な音がするし。どう考えようと周りの空気が薄暗く人家も少ない。


だが、家電のようなものはあり、前の家とほとんど同じように便利に過ごせるようだった。もしかすると、魔法がある分前の世界よりも技術が発展しているのかもしれなかった。人間の欲はすさまじいと思う。


一応面倒を見られながら、けれどもおっかねえ子供だと思われていたので遊んでもらうことはほとんどなかった。一応本を読みたいと言えば借りることができた。暇は潰せたが何とも言えない気持ちになった。


自分は、人に働きかけるのが下手だと思う。繊細で、人に声を掛けるだけでも緊張するような人間よりはマシかも知れないが、正直そのほうがマシなこともあるだろう。そういう人間は少なくとも人とある程度関わりたいと思っている。


自分はあまりそういうふうにはなれなかった。本を読んで、暇をつぶして、何も言われずとも恐れられていようとも生きていればそこまでの問題はない。これはこれでうらやましい人間もいるかもしれないが、その分大きな喜びも少ない。


前世から変わっていない。遺伝と環境は変わりつつあるものの、おそらく自分本来の性格は変わっていない。自分の手からは人とのつながりが転がり落ちて滑っていくような気がする。周りのせいにすることもあれど、やっぱり自分がろくな人間じゃないからこうなのかもしれない。


こうしてだらだらと意味のないことを考えることも含め自分は恥ずかしい人間ではあるだろう。生そのものに感謝するとか、出来なくとも日々に向き合い落ち込み喜ぶとか、出来ることはあるはずだ。他の人なら。


たまに自分以外の他の人なら、前世のあの環境でも上手くやれたんじゃないかと思う。運命は本当に小さいことが少し変化するだけで簡単に違ってしまうものだから。けれどやっぱり自分は自分だし他の何ものにもなれないかけがえのないものでもあった。


明日面談があるらしい。あの魔女結構やらかしてたらしいから事情聴取みたいな事だ。だいたいここに来てから1週間足らず、自分はおとなしく年の割にはっきり物事をしゃべるから行けると思われたようだ。もう少し子供らしくしておけばよかった。


昔から子供らしさはどういうものなのかわからない。けれど子供らしいほうが大人に受けがいいことが多いのはかなり前から知っていた。

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