第5話
ドアの先は穴があいていた。いや、比喩ではなく。四角い大体人一人は通れるくらいの穴。他にも廊下にはドアがあり、何故か他は普通に自分にも開けられる高さになっている。
明かりはふよふよと浮かびながら自分のもとをついてくる。とっても便利。
三つ部屋があり、一つはトイレ、一つは湯船と洗面台、もう一つは書斎のようだった。机も置いてある。椅子も自分に使えるものがあった。
これ、監禁されてたっぽいな…いや、薬のためになんとかかんとかって聞いたことと、部屋のドアだけ絶妙に開かない辺りまぁ…まぁ…いやけどそれなら他のドアも…
いや、このドアだけ開けておいて普段は生活させておいて、いざって時に出れなくさせれるな。うわあ。スキルがなければどうなっていたのやら。怖。
なお、下には降りてみたいものの、ある程度高さがあって降りれば痛そうである。やめておこう。
とうとうやることがなくなってしまった。少なくとも生きてはいける。食べ物は用意できるし、魔法がくっついている風呂やトイレもあるらしい。となれば寝るくらいしかすることはない。
流石三歳児、この暗い夜にここまで動けば眠くもなる。運動は大してしていなくとも頭脳労働である。不便だなこれ。後ずっと視点が低い。物が大きく感じる。
うん。寝よう。横に死体転がってたベットとかまあちょっと嫌だけど。眠れはする。まあ。心なしか匂いするけど。気の所為だと信じて眠ろう。
魔女のような人がいる。たぶん横たわっていたあの人だ。見目麗しい少女もいる。自分とは到底似つかない。
「ああ…!銀色の髪に青い目…!これだけあれば私の娘が…!」
「だあれ?」
「あら、お嬢さん。私についてきてもらえるかしら?」
「ううん、私、スキルがないから家から出されちゃった。けどね、知らない人にはついて行っちゃだめって言われてるから。」
「あら、そうなのね。それじゃあ眠ってちょうだい。」
「?」
子供が眠っている。さっきまで起きていたはずだった。最近不審者の話をよく聞いていた。子どもが狙われるという話だった。なかなか捕まらないと聞いていた。
見つかる前に逃げようと思った。だが、その時間がなさそうだったから隠れて物陰から様子を見ていた。魔女が子供を抱えて歩いていく。目があう。声が聞こえる。
「ここにもいた」
目が覚めた。悪い夢を見たと思った。前世に戻ったりはしなかった。自分の手は小さい。前と同じでこれでは何も守れない。前も何を守りたかったのかはよく覚えていない。いや、考えていなかっただけだ。
前は細い腕に細い手をしていた。今回はどうなるだろう。っていうかおっかないなあの魔女。普通にだいぶ怖いぞ。よく忘れてたな。
窓から朝日が差している。洗面所に向かう。ちゃんと自分に使える高さだ。なぜか前世と同じ感覚で使えるようになっている。あの魔女も日本に住んでいたのかもしれない。
鏡を見る。月をそのままはめ込んだような銀色の瞳に、それと同じような色の銀色の髪をしている。それにはっきりとした目。ちゃんと通った鼻筋に薄い唇。
まあ確かに好きなアニメキャラはこういう見た目をしていた。現実に起こしたらこうなるだろう。うん…そういうことじゃねえ。
少なくとも自分としては、ここまで便利に何でもできるようになった以上、それ以上をあまり望もうとは思えない。少なくとも死にはしない。しかもずっとだ。同時に恐ろしくもあるわけだが、そんなことは今考えてもどうしようもない。
彼女はそんなことはなかったのかもしれないが、私にはどうだっていいのだ。
お腹が空いたのでご飯を食べることにした。そばが食べたい。食器はどうなるのかの実験にもなるだろう。
「蕎麦」
出てきた。食器にお盆付きで。箸もちゃんとある。ありがたい。
「いただきます」
普通に美味しい。劇的に美味しい訳では無い。まあ十分である。
食べ終わった。食べ終わると同時に食器は消えた。後片付けをしなくていいとなると大変便利である。
うん。やることないな。誰もいなくても孤独とかはあんまり感じない。これは元からだ。
本読むか。まずは自分の部屋の本棚をみてみる。子ども向けの絵本のようなものや、それなりに長い小説もある。現代人としてはまあインターネットやゲームがないと厳しい部分はあるだろうが、もともと本は嫌いじゃない。しばらく読んで暇をつぶそう。
書斎の本棚には魔法の本もあった。しばらくは暇をつぶせるだろう。暇をつぶせなくなれば街に向かえばいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます