涙の居所
遠くを見るのが怖かった。いや、違うんだ。遠くにいる自分が想像できないからかもしれない。今も考えることもなくて過去ばかりが、周りばかりが、しんどく乗りかかるばかり。
もうずっと、こうな気がして自分が望んでいるものさえもあやふやになって世界を掠めていく。
生が苦しく、息がしんどい。誰かに会えば楽になるのか。それでもその後がとてつもない孤独が襲うのを知っている。ドラックみたいだ、まるで。でも楽しみているのも分からない。楽しめているはずなのに、楽しめていたかは思い出せない。儚い夢を見た気がするのに、体はその疲労が巡る。
零れ落ちた身の皮が水分を亡くて生命が終わる。自分のものだったのに、他人事の様に感じる。ちっぽけな欠片が胸を襲う。胸を鷲積みにして握り潰されるんじゃないかと息苦しくなる。苦しくて苦しくて、藻掻いても何にもならない。
嗚咽が音に成らず、ずっと耳の奥でこだまする。
もう、やめて。頭の中で願うのは気持ちとは裏腹なのは分かってる。だけどこんな風にしなくてもいいじゃないか。音色が綺麗なのと同じように綺麗でいたかった。ただそれだけなのに、どうして不協和音になってしまうの。
逃げ出してしまおう、何度も考えては手放した。何も悪いわけじゃなかった。恵まれている方って言い聞かせれば言い聞かすほど胸が握り潰されて嗚咽が耳の奥で聞こえるのをじっと耐える。まるで悪夢みたいに、発熱のときに見る悪夢みたな感覚がとても嫌だった。嫌なはずなのに、どうして何もできないんだろう。できなくなってしまったんだろう。
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