8.初! 邪神封印! 南無阿弥陀仏!

 ────って。

 こんな少女まんがみたいなこと、のんきに考えてる場合じゃないよね!

 まゆうちゃんは……みんなは、無事⁉

 一瞬、スローモーションだった世界が、再び勢いよく回りだす。 

 邪神は、なぜか攻撃を弱めたみたいだった。

 ふと、阿弥陀如来サマの声が、音楽を聴いているかのように頭の中に流れ込んできた。

 ──みかる氏! 邪神は動揺しています。祓うなら今しかありません! 私のあとに続いて、こう唱えるのです!

 えっ? えっ? 

 ──人の美魂を惑わす邪神よ……──

「ひっ! 人の美魂を惑わす邪神よ、自分の棲むべき場所に還れ。ゆめゆめ、二度と現るるでない! 阿弥陀如来職務補佐第一中学生、桜望中生徒会長、雨宮みかるが命じる!」

 阿弥陀如来サマが頭の中で言っている通り、強い念を込めて札に手をかざすと、まばゆいばかりの閃光があたりに立ち込めて──

 大量の札が、バババババッと出現! それも、宙に!

 私たちを取り囲うように、強い光を放ちながら浮かんでいる。

 まるで、オーロラみたい……! そんでもって、ななな、なにこの数! 札、軽く千枚はありそうだよ……っ!

「邪神、封じる! まゆうちゃんの魂は、極楽浄土へ! 『南無阿弥陀仏』!」

『みんなを守りたい!』と、私が強い念を込めてさけんだとたん、千枚の札が、勢いよく邪神に向かって飛んでいく。

 まばゆいばかりの閃光が、屋上全体を包み込んだ。

 邪神のうめき声。それは、苦悶を現した声だった。

【あみだぶつ】の初ミッション、成功したっ⁉

 私が強い光に目をうばわれていると、邪神が姿を消す前に、こう言ったんだ。

 ──グうゥッ! おのれ生徒会め! 邪魔しおって! 雨宮みかるよ、覚えておれ! 必ずや消してやるぞよ!

 ひえええっ⁉ 必ずや消してやるぞよ⁉

 ──必ず、消す。それって、それってもしかして……

 はえええー! もしかして私、命のキケンの予感⁉

 そっ、そんなぁ! そんなの、いくらなんでもひどすぎるからあー! 阿弥陀如来サマ!

「──この、まゆうという少女は、確かにせとさんのことが好きでした。せとさんと仲の良いみかる氏に、強い嫉妬をしていたところを、邪神に狙われたのでしょう」

 邪神を封印したあとで阿弥陀如来サマは、私のひざの上に倒れかかって気を失っているまゆうちゃんを見て、切なそうに言った。

「……嫉妬なんて、そんなもの、みかる氏の言うとおり恋を経験すれば誰だって抱く感情です。いわば、トーゼンのもの。なにも悪いことなどない。──この少女の記憶は、あとで私が、責任をもって消しておきます」

 へっ⁉ うわわっ! 感動的なセリフのあとに、阿弥陀如来サマ、さらっとショーゲキ的なこと言ってるけど、記憶を消すなんて、そんな凄いことが出来るんなら、なんで最初から言っておいてくれないのー⁉

 ぷくう、とむくれる私に、ゆゆりんが言った。

「『ごくらく★生徒会』の初仕事……見事クリアですわね。私、なにも出来ずに、ただ皆さんを見守っていただけで……申しワケありませんでしたわ」

「ゆゆりんさんは、女の子ですから。だれもそんなこと責めませんよ」

 黒縁メガネをくいっと上げ直して、真顔でそう言う一心くん。

 女の子……。当たり前だけど、一心くんには、ゆゆりんがそう見えているんだ。

 そういえば、さっきも一心くんは、ゆゆりんを一番に守ろうとしていたよね。

 女の子あつかいされちゃうのって、なんとなく気恥ずかしく感じちゃいそうだけど……そんなふうに思われているなんて、ちょっと素敵だな。

「まゆうちゃんが気がついた時、私そばにいる。保健室まで連れて行くよ」

「オレが運ぶわ」

 せとが「よっ」とまゆうちゃんを背中におぶう。

 そのあと。保健室で目が覚めた直後、まゆうちゃんに、このことを話すと──せとのことは諦めたものの、やっぱり乙女なまゆうちゃんは、きゅう〜☆ともう一度、キゼツしちゃったんだ。

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