第6話 佳奈姉さんはコーディネートで悩殺したい(後編)
佳奈姉さんの主導で始まった“ファッションショー”は、次々と俺の耐久力を削っていった。
春のデートコーデ、ダーリンおかえりなさいコーデ、初夏の膝枕コーデ。
どれも俺の好みをピンポイントで突いてきて、まともに目を合わせられない。
「……おい佳奈姉、もう十分だろ!」
「なに言ってんの。まだ本命が残ってるじゃない」
挑発的に笑う佳奈姉さんの声に押され、俺は観念してあかりの部屋のドアが再び開くのを待った。
◇
数分後。
「ど、どうかなお兄ちゃん……」
あかりが姿を現した瞬間、息が止まりそうになった。
チビTシャツにローウエストのショートデニム。
胸を包む布地は限界まで引き伸ばされ、柔らかな曲線を主張している。
デニムは腰骨の位置まで下がり、大きなお尻のラインを容赦なく浮かび上がらせていた。
白くて健康的な太もも、そこから下はすらりと伸びた脚。
「お、おい佳奈姉! これは反則だろ!」
「何がよ。あかりちゃんと結婚したら毎日見れるわよ? ……で、感想は?」
強引に迫られて、頭が真っ白になる。
「こ、これは……とても刺激が強すぎる……」
しどろもどろで答えると、あかりは顔を真っ赤にしながらも小さく微笑んだ。
「いつでも、癒してあげるね。お兄ちゃん」
その一言に、胸が大きく揺さぶられる。
◇
「はい次!」
佳奈姉さんが取り出したのは、見覚えのないスマホアプリ画面だった。
「……なにそれ」
「嘘発見アプリ。これであんたに質問するから、“いいえ”だけで答えなさい」
「はぁ!?」
「いいから。あかりちゃんも見ててね」
有無を言わせず、アプリが起動される。
「質問その一。あかりの太ももは柔らかくて気持ちいい」
「い、いいえ!」
画面には赤い警告ランプが点滅した。
「ぷっ……! バレてるじゃん」
「お兄ちゃん……恥ずかしい……」
あかりが膝を擦り合わせ、顔を赤らめる。俺は耳まで熱くなった。
「質問その二。やはり巨乳好きである」
「……いいえ!」
またしても赤ランプ。
「あーあ、やっぱりね」
「ふふっ……お兄ちゃんやっぱり好きなんだね」
あかりが小さく笑い、胸元を両腕で隠そうとする。
だが、隠しきれない存在感に視線が勝手に吸い寄せられる。
「質問その三。あかりちゃんの巨乳で優しく包まれたい」
「い、いいえだって!」
赤ランプが激しく点滅し、部屋に佳奈姉の笑い声が響いた。
あかりは顔を真っ赤にしながらも、かすかに囁く。
「……私も頑張るね。お兄ちゃん」
胸の奥がかき乱される。
「質問その四。胸派かお尻派かといえば、どっちも派である」
「……いいえ!」
無情に赤ランプ。
「はい、正直者でしたー!どっちも派だって!」
佳奈姉さんは腹を抱えて笑い、あかりは耳まで真っ赤にして俺を見ていた。
◇
「はい、最後の仕上げ」
佳奈姉さんはスマホを構え、カメラをこちらに向ける。
「お兄ちゃん、こっち来て……」
促されるまま座った瞬間、あかりが横からすっと膝を差し出した。
あまりの膝枕の柔らかさに頭を預けた途端、シャッター音が響く。
「ちょ、やめろ佳奈姉!」
「いい顔してるじゃないの。保存保存」
慌てる俺をよそに、佳奈姉さんは満足そうに笑った。
「今日はここまでね。次はもっとすごいのを用意してあげる」
そう言い残して、彼女は部屋を後にした。
——その日、俺の精神力はすっかり削られ、ベッドに倒れ込むしかなかった。
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