第6話 佳奈姉さんはコーディネートで悩殺したい(後編)

 佳奈姉さんの主導で始まった“ファッションショー”は、次々と俺の耐久力を削っていった。


 春のデートコーデ、ダーリンおかえりなさいコーデ、初夏の膝枕コーデ。


 どれも俺の好みをピンポイントで突いてきて、まともに目を合わせられない。


「……おい佳奈姉、もう十分だろ!」


「なに言ってんの。まだ本命が残ってるじゃない」


 挑発的に笑う佳奈姉さんの声に押され、俺は観念してあかりの部屋のドアが再び開くのを待った。



 数分後。


「ど、どうかなお兄ちゃん……」


 あかりが姿を現した瞬間、息が止まりそうになった。


 チビTシャツにローウエストのショートデニム。


 胸を包む布地は限界まで引き伸ばされ、柔らかな曲線を主張している。


 デニムは腰骨の位置まで下がり、大きなお尻のラインを容赦なく浮かび上がらせていた。


 白くて健康的な太もも、そこから下はすらりと伸びた脚。


「お、おい佳奈姉! これは反則だろ!」


「何がよ。あかりちゃんと結婚したら毎日見れるわよ? ……で、感想は?」


 強引に迫られて、頭が真っ白になる。


「こ、これは……とても刺激が強すぎる……」


 しどろもどろで答えると、あかりは顔を真っ赤にしながらも小さく微笑んだ。


「いつでも、癒してあげるね。お兄ちゃん」


 その一言に、胸が大きく揺さぶられる。



「はい次!」


 佳奈姉さんが取り出したのは、見覚えのないスマホアプリ画面だった。


「……なにそれ」


「嘘発見アプリ。これであんたに質問するから、“いいえ”だけで答えなさい」


「はぁ!?」


「いいから。あかりちゃんも見ててね」


 有無を言わせず、アプリが起動される。



「質問その一。あかりの太ももは柔らかくて気持ちいい」


「い、いいえ!」


 画面には赤い警告ランプが点滅した。


「ぷっ……! バレてるじゃん」


「お兄ちゃん……恥ずかしい……」


 あかりが膝を擦り合わせ、顔を赤らめる。俺は耳まで熱くなった。



「質問その二。やはり巨乳好きである」


「……いいえ!」


 またしても赤ランプ。


「あーあ、やっぱりね」


「ふふっ……お兄ちゃんやっぱり好きなんだね」


 あかりが小さく笑い、胸元を両腕で隠そうとする。

だが、隠しきれない存在感に視線が勝手に吸い寄せられる。


「質問その三。あかりちゃんの巨乳で優しく包まれたい」


「い、いいえだって!」


 赤ランプが激しく点滅し、部屋に佳奈姉の笑い声が響いた。


 あかりは顔を真っ赤にしながらも、かすかに囁く。


「……私も頑張るね。お兄ちゃん」


 胸の奥がかき乱される。


「質問その四。胸派かお尻派かといえば、どっちも派である」


「……いいえ!」


 無情に赤ランプ。


「はい、正直者でしたー!どっちも派だって!」


 佳奈姉さんは腹を抱えて笑い、あかりは耳まで真っ赤にして俺を見ていた。



「はい、最後の仕上げ」


 佳奈姉さんはスマホを構え、カメラをこちらに向ける。


「お兄ちゃん、こっち来て……」


 促されるまま座った瞬間、あかりが横からすっと膝を差し出した。

 あまりの膝枕の柔らかさに頭を預けた途端、シャッター音が響く。


「ちょ、やめろ佳奈姉!」


「いい顔してるじゃないの。保存保存」


 慌てる俺をよそに、佳奈姉さんは満足そうに笑った。


「今日はここまでね。次はもっとすごいのを用意してあげる」


 そう言い残して、彼女は部屋を後にした。


 ——その日、俺の精神力はすっかり削られ、ベッドに倒れ込むしかなかった。

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