第35話 魔法使いってたいへん
「そうそう。私は閉じ込めたこいつを連行してロンドンに戻らなきゃならないけど、二人はもう少しゆっくりしていきなさい。ここは君たちの故郷、日本なんだから」
「え? ホントに?」
ユーリの顔がゆるんだ。
ママのご飯、もう少し食べたいのかな。
「あ、それより内田だけど……」
ユーリ、またちょっと目を伏せた。
ホントは正義感が強くて、優しいんだよね。
目つきは悪いけど。
「内田くんなら大丈夫。不老不死にはされてなかったし、目を覚ましたら全部忘れる魔法をかけておいた。ソーサラーの魔法で操られてただけって報告しておく」
「よかった……あ、でもいじめは……」
「それはユーリ・ノックス・シラカワ。これからの数日で君がなんとかしなさい」
「あ、はい! アイ・ガット・ディス!」
英語‼ でも、ユーリはその顔が一番だよ。不敵な笑みってやつ?
***
あのとき、ソーサラーやベヒモスとたたかいながら、ユーリとカイトさんは学校全体にイリュージョニスと防護魔法をかけていて、どうしても攻撃力が弱くなってたんだって。とはいえ、ウィザードならそのくらい軽々とやらなきゃいけないらしい。
魔法使いってやっぱりたいへんだなあ。
いじめっ子三人はユーリが友だち――というより舎弟みたいに見えるけど――にしちゃって、いじめはやめるって約束させてた。技術室での恐怖の出来事は(ユーリにやられた部分を除いて)市瀬先生が記憶を消してくれた。
内田くんはきょうも静かに本を読んでる。
西都部長と真彩は仲良く吹部の練習にはげんでる。
……西都部長の好きな人って真彩のことだったんじゃないかな。いきなり告白されてついごまかしちゃっただけで。
真彩は「西都部長が私を見てた」って言ってたけど、それはすぐにトロンボーンの音を外すからじゃない? もっと練習しなきゃ。情けない。
ユーリとカイトさん、日本で家族に会いに行くのかと思ったら、今は家族もロンドンに住んでいて、いつでも会えるんだって。なんかあんまり厳しくないのかも、
全部が終われば、二人に関する学校のみんなの記憶を消すのかと思ったけど、魔法に関係しない限りそういうことはしないんだって。
短期帰国留学ってことにしたみたい。せっかくこの学校に来て、みんなと一緒に過ごしたのに、自分たちが「いなかったこと」になるのは悲しいもんね。
でも、二人はもうすぐロンドンに帰っちゃう。
それは仕方ないことなんだけど……。
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