第30話 思いの強さが力になる

 カイトさんは、サッカー部員と竜巻の間の校庭に降り立った。


「デフェンシオ・ドムス!」

 光のドームが現れて竜巻をなんとか阻止したが、カイトさんは竜巻を止めた衝撃で倒れ、校庭に転がった。

 ああ、けがしてなければいいんだけど……。


「カイト‼」

 ユーリが大声で叫んだ。

 水原先生、じゃなくてソーサラー、なんてひきょうなことするんだろう。


「くっそー。桔梗、ほうきに乗れ!」

「わかった」


「マギア・トティウス・インペトゥス!」

 上空からユーリが太い光の束を男に放った。


「インヴェルシオニス」

 男が今度は低い声で呪文を唱えると、光の束は私たちの方に向きを変えた。


「くそっ! また反転された!」

 ほうきで逃げながらユーリが光の壁を出した。

 でっも、反動で私たちは上空へはじき飛ばされた。


「きゃあ!」

「桔梗ー‼」

 二人は宙を舞い、地上に落ちる寸前で間一髪、ほうきがものすごいスピードで戻ってきて私たちを拾い上げた。


 五芒星ごぼうせい、今のピンチでも出なかった。おなじないなのに、ほうき……じゃなくてユーリの魔法を信頼してるのかな。


「おじいちゃん、私、どうすれば……」

 リモート五芒星、ほうきに乗ってる私たちと同じスピードで飛んでる。どういう原理なんだろう。

 まあ、おじいちゃんの陰陽術がすごいんだけどね。


「あんなのは陰陽師の敵ではないぞ。さっさとやっつけてしまえ」

「やっつけろってどうやって?」

祭文さいもんなんてのは景気づけの言葉にすぎん。桔梗はどうしたい?」

「それは、ソーサラーを退治したいけど……」

「じゃあ、そう強く願えばいい。桔梗は五芒星なんだから」

「ええ⁉」

「ほら、早くせんか」

 おじいちゃん、アバウトすぎるよ!


「あ、あの……き、桔梗さんのおじいさんですか?」

 ん? ユーリ敬語使ってる?

「ああ、君は魔法使いかな。桔梗のこと、よろしく頼むぞ」

「え? あ、はい! 当然です!」


 なんかちょっと意味深なやり取りみたいな気もするけどまあいいや。

 それどころじゃないし。


「さあ桔梗。まずはあの上空のあやかしを倒してみろ」


 もう、やるしかない。祭文(さいもん)思いつかないからヤケクソだ!

「そこのヘンテコなあやかし! 元の世界に戻って!」


 小さな青い五芒星が無数に出現し、上空に浮いているベヒモスの表面に張り付き始めた。ところが……。


「ブモモモモ!」

 ベヒモスがけたたましくほえると、青い五芒星は飛び散ってしまった。


「桔梗。お前の思いの強さが力になるんだぞ」

 おじいちゃんがあきれた声で言った。

「うーん、そんな簡単に言われても……」


「何をやっても無駄だ。創造主そうぞうしゅ以外は剣を突き刺すことさえできない最強の存在だぞ。あきらめろ。私はここで高見の見物をさせてもらおう」

 ソーサラーは余裕しゃくしゃくにあざ笑った。

「さあ、ベヒモス、力を示すときだ」


「ブモモモモモモモモモモ」

 ベヒモスはひときわ大きなおたけびを上げた。


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