第27話 たたかいの火ぶた

 私たちはほうきに乗って校庭の上空に飛び出した。

 ユーリと私が先頭。カイトさんが続く。


「屋上だ!」

 何かを察知したカイトさんが叫んだ。


 水原先生――いや、ソーサラーは新校舎の屋上に降り立っていた。

「気づかれたか」


「観念したらどうだ!」

 ユーリが叫ぶ。


「ふふ。私が観念? 面白いことを言うな。ちっちゃなマグス・プエルくん。それと……」

水原先生の目がカイトさんに向く。

「君は……」


「黙れ!」

 カイトさんが杖を構えた。


「なるほど」

 ソーサラーは不気味に笑う。


「どういう意味?」

 私はつい、つぶやいた。

 私たちは屋上へ降り立った。


「私は不老不死だ。生徒を使い、教師を演じ、何十年でもここにいられる。遊びに飽きたら別の街へ行けばいい」


「そんなの、ただの悪夢だ!」

 ユーリが一歩前へ出る。

「生徒を利用して、人生を壊して……そんな遊びが許されるわけない!」


「これは実験でもあるのだが」

 ソーサラーは仮面を外した。そこに現れた顔は――もう水原先生じゃなかった。

 若々しい、けれどどこか年齢不詳の不気味な表情。


「君たちのような特別な者を集め、力を試す。そして仲間にする。ふふ。私は退屈が何より嫌いでね」


「お前みたいなやつがいるから……」

 ユーリの杖に炎が灯る。

「オレたちがたたかわわなきゃいけないんだ!」


「いいだろう。では――始めようか」

 ソーサラーが両手を広げ、漆黒の魔法陣が屋上いっぱいに展開された。


「アトリ・テネブリス!」

 黒い光が渦巻き、風が唸りを上げる。


「魔をはらえ! 五芒星ごぼうせい!」

 私は初めて自分の意思で五芒星を呼び出した。

 まばゆく光る星形が浮かび、闇を押し返す。


「桔梗、ナイス!」

 ユーリが叫ぶ。

「イグニス・ルーメン!」

 炎の光が闇を裂き、屋上の空気が一瞬にして熱気を帯びた。


「まだまだ!」

 ソーサラーが笑いながら杖を振る。

「プルガトリウム・フェッリ!」


 漆黒の鎖が空中をうねり、私たちを絡め取ろうと迫る。


「スクートゥム・ルーメン!」

 カイトさんが即座に防御魔法を展開し、鎖をはじいた。


「二人とも! 協力して!」

「わかってる!」

 ユーリと私は同時にうなずいた。


「――マギア・コンジャンクトゥス!」

「――五芒星!」


 光と炎が絡み合い、ソーサラーの魔法陣にぶつかった。屋上全体が震え、校舎の窓ガラスがガタガタと音を立てる。


「ほう……面白い!」

 ソーサラーは興奮した声をあげる。

「やはり君たちは特別だ! ますます欲しくなった!」


「ふざけるな!」

 ユーリが叫ぶ。

「オレたちはお前のオモチャじゃないぞ!」


 闘いは激しさを増し、光と闇が屋上で激突を繰り返した――。

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