第25話 行いのほころび

「とにかく今はソーサラーを追おう」

「ああ」


「ブルーム!」


 二人が同時に叫ぶとほうきが二本、廊下から飛び込んできた。

 かばんからここまで、すごい速さ!


「えーと、私は……」

「一緒に行くに決まってるだろ。オレの後ろに乗れよ!」

「私、スカートなんだけど……」

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ!」

 うわ、デリカシーのないやつ。しょうがないなあ。


「わかった」

 私はユーリの後ろに横向きにまたがった。日曜日と同じく五芒星は出ない。魔法なのに、どうなってるんだろう。そんなこと考えてる場合じゃないけど。


 ユーリと私を乗せたほうきは新校舎の脇をすり抜けて校庭の上空に出た。カイトさんもついてきている。


 校庭ではサッカー部が練習していた。うわ、気付かれる……。

「イリュージョニス!」

 ユーリが叫んだ。得意の幻惑魔法だ。


 サッカー部員の上を飛んで私たちは体育館の裏に行き着いた。

「あれ? シグナムが落ちてる」

 光る物が地面に落ちていた。


「また逃げられか」

「あの……だとすると技術室の内田くんが危ないんじゃ……」

「ああ、桔梗さん。大丈夫なんだ」

「え? どうしてですか?」

「今はちょっと言えないけど……そのうちわかるよ」


「オレさ、ソーサラーの目星がついたよ」

「そうか、言ってみな、ユーリ」

「体育の水原先生」


「ええ⁉」

びっくりした。予想もしなかった名前だ。


「オレが体育のサッカーで勝手なことしてても、怒りもしなかっただろ」

「あ、うん」

「同級生のやつらに聞いたんだ。普段は優しいけど、体育の時間だけは言うことを守らなかったり危ないことすると、すごく厳しかったって」

「あ、確かに前は……」

「生徒の安全を考えてのことなんだよな。だから、オレをほっといたのは変だったんだよ。みんなもそう言ってた」


「ユーリがうまいからだって思ってたけど……」

「行いのほころびだね」。カイトさんが言った。


「オレを警戒けいかいしすぎたんだろうな。怒るにはオレに近づかなきゃならないし、手下の内田もいたから、優しい先生を演じすぎたんだ」

「でもそれだけじゃ、まだ証拠しょうこにならないんじゃ……」

あの優しい水原先生がソーサラーだなんて、やっぱり信じられない。


「決め手はこの場所だよ」

「え?」

「体育の先生が疑われずに何かするには体育館の裏はもってこいだ。ここを隠れがにしてたんだ。最初の日の攻撃もそれで説明がつくだろ。内田がオレたちの動きを教えてたんだ」


ユーリ、今日は冷静で頭が冴えてる。こっちがホントのユーリ……なわけないか。


「とはいえまだ慎重にね」カイトさんがくぎを刺す。

「わかってるって。でもさ、きょう一気に攻めようぜ」

「そうだね。職員室へ行ってみよう」


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