第24話 オレがぜったい守る

「だからそんな誘いに乗るかって。内田を誘惑しやがって。お前、ぜったい許さないからな!」

「そうか。では、この内田とたたかってもらおう。こいつも魔法の才能があってな。そうそう、そこの三人に復讐ふくしゅうしたいそうだ。君に止められるかな」


「くそっ。内田、やめろ! 魔法で人を殺したら人間じゃなくなるぞ!」

「……こいつらが人間だっていうなら、ボクは人間なんてやめるよ」

「いい心掛けだ。私が見込んだだけのことはある。さて、私はこの辺で消えさせてもらうよ」


「あ、待て!」

 ユーリが叫んだが、男は魔法陣の中に消えていった。


「桔梗さん」

 カイトさんが横に立っていた。

「ユーリの気配が急に消えたからびっくりして、跡をたどってここに来たんだ。授業受けてる場合じゃなかったね」

「カイトさん、よかった……」


「これ、鉄の煉獄れんごくだね」

「え?」

「魔法で外界と遮断しゃだんされてるんだ」

「ああ、それでドアが開かなくて……内田くんがユーリと闘っているんです」

「そうなんだ。ということは、内田くんがソーサラー……ではなさそうだね」

 カイトさんが中をのぞいてそう言った。


「ソーサラーも現れたんですけど、すぐに消えちゃったんです」

「彼、魔法を授かっちゃったのか……まずいな」


 中では内田くんの炎をユーリが何度も打ち消してる。

「桔梗さん、悪いんだけど。扉に思い切り体当たりしてくれない?」

「え?」

「ボクの魔法じゃ開きそうもないからね。でもこれ、開かないのも魔法だから、ぶつかれば桔梗さんの五芒星が発動するんじゃないかな」

「ああ、わかりました」

「ごめん。確証はないけど……」


 一か八か、やるしかない。まあ、失敗しても打撲傷だぼくしょうぐらいでしょ。私は助走をつけて、肩から思い切り扉にぶつかり……そうになったところで五芒星が現れて、扉を内側に吹き飛ばした。


「よし、開いた」

 そう言ってカイトさんが中に飛び込んでいった。私も後に続いた。


「デフェンシオ・ドムス!」

 カイトさんが杖を出して叫ぶと、ふるえ上がっていた三人を魔法陣のドームがおおい、三人は意識を失った。


「マギア・ウィンクラ!」

「ぐわあ!」

 西都部長の時と同じ鎖が現れ、内田くんの体をあっと言う間にぐるぐる巻きにした。


「ユーリ、大丈夫か」

「……はは、今度はカイトに助けられちゃったな」

「なんで連絡しなかった?」

「ごめん。いじめならオレがやめさせなきゃって思って……」

「ユーリらしいなあ。でも、それだけかな? 桔梗さん連れてきてるし……」

「え? あ、いやその……」

「はは。まあいいや。それよりソーサラーだ」


「シグヌム、しるしはつけたけど」

「え? ホントに?」

「ああ、オレだってカイトみたいな追跡魔法も使えるんだぞ」

「うん。成長したな、ユーリ」

「なんだよ、また子ども扱いかよ」

「子どもは子どもだろ」

「くそー。そうだよオレはどうせ、ちっちゃなチビだよ!」

「ん? どうした急にひねくれて?」

「なんでもないよ。それより早く追跡しなきゃ」

「そうだね」


 魔法の鎖でぐるぐる巻きにされた内田くんは気を失っている。

「彼、ソーサラーの魔法を使っちゃってたけど………」

 カイトさんが心配そうな顔になった。


「内田に懲罰ちょうばつとかありえないからな。ソーサラーに付け込まれただけだろ」

「それはそうなんだろうけど……」

「オレがぜったい内田も守る」

 ああ、ユーリはそういうやつだよね。


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