第10話 うちの子になりたい⁉

「う、うまい。このハンバーグ。オレ、涙が出てきた」

「ね、ママの料理、ホントにおいしいでしょ」


 ハンバーグをパクつくユーリに、弟の立夏が得意げに言った。

 きょう会ったばかりなのに、私と立夏、ユーリとカイトさん――四人で食卓を囲んでるなんて、なんか不思議な感じだなあ。


「オレ、帰りたくなくなってきたかも。アカデミア、食い物まずいんだよな」

 さっきは早くロンドンに帰りたいって言ってたのに。


「それならユーリ、ボクのお兄ちゃんになれば?」

「ちょ!」

「どうしたのおねえちゃん?」

「あ、いや……」


 なんてこと言うの立夏。それ、私とユーリが結婚するってこと⁉


「オレ、マジでこの家にもらわれたいかも……」

 ああ、養子か……って、それでも面倒な弟が一人増えちゃうんだけど!


***


「二人の親御さんはどうしているの? あ、聞いちゃいけなかったかな」

 麦茶のボトルを持ってきたママが、珍しく真面目な顔をした。


「いえ……はい。ボクら実は日本生まれで、家族は日本にいるんです。でも、ちょっと事情があって……今はボクら、ロンドンで学んでいます」

「そうなんだ。でも今回は二人、どうして日本に来たの?」

「ええ。実はボクら、イギリスと日本をつなぐ、ある使命がありまして……それは両親にも秘密でして……」


 カイトさん、それでごまかせる?


「そうなの。複雑な事情がありそうね。わかった。うちは、いつまでいてもらってもかまわないから」


 うわ。ママ納得しちゃった。警戒心けいかいしんなさすぎ。……まあ、ママだからしょうがないか。


「ホントに助かります。このご恩はいつか必ず、お返しします」

 カイトさんは礼儀正しいなあ。言ってることは半分うそだけど。


「あ、あの……ご飯、おかわりしていいですか」

 ユーリが遠慮えんりょがちにお茶碗を差し出した。


「もちろんよ。どんどん食べてね。伸び盛りだもんね」

「はい!」


 ユーリは満面の笑顔になった。

 ……こんなお子さまが魔法の天才とはね。

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