第8話 おじいちゃんのせい?

「おーいカイト。こいつすっげーいいやつ。オレたち、もう友だちだぜ!」

 階段の上から声がして、ユーリと弟の立夏りっかが下りてきた。


「あれ? なんで桜庭がここに?」

 ユーリがけげんそうな顔をした。また目つきが悪いぞ。


「ユーリ、ここは桔梗さんの家だったんだ」

「ええ⁉」


 二人とも、表札見てなかったのかな。


「お姉ちゃんお帰り。ユーリのこと知ってたの?」

「ああ、まあね。同じクラスに転校してきたから……」

「同じクラス? ユーリ、こんなにちっちゃいのに?」


 立夏とユーリの背は同じくらいだ。立夏にもおまじないがかかってるから、イリュなんとかは通じない。


「あ、はは。オレ、実は中二なんだ」

 うそつくなって。


「へえ。お兄ちゃんだったんだ」

「そうだぜ。そのうち勉強教えてやるよ」

「ホント?」


 君たち同い年なんだけど……ごめん北斗、秘密にする約束だから。まあ勉強ができるのはホントみたいだけどね。


「でもさ、夕飯までもうちょっとゲームしようよ」

「そうだな。じゃあ桜庭、またあとで」


 そう言ってユーリは立夏と一緒に階段を戻って行った。


「なんだか急に騒々そうぞうしくなっちゃったね。お父さんが単身赴任ふにん中でよかった」

 ママも廊下に出てきた。ホントだよ。ママの行動は突拍子とっぴょうしもないんだから。


「イギリスから来たって言うし、『困っている人がいたらとりあえず助けろ』って私、おじいちゃんから叩き込まれてたから、ほっておけなかったの」


 これも元をただせばおじいちゃんのせいだったのか。まあ、もし警察に連絡してたら、そっちの方がやっかいなことになってただろうし、結果オーライかな。


「ママのやることだからなあ。私、荷物置いてくる」

 そう言って私は階段を上がった。


***


 制服を着替えてリビングに戻ったら、ママがエコバッグを持って出かけようとしていた。


「あ、桔梗。また買い物行ってくるけど、食べたいものある?」

「うん。私はなんでもいい。カイトさんは?」

「あ、いえ、お世話になるだけでも恐縮なのに、食べたいものなんて……」

「じゃあ男の子が三人になったから、きょうはハンバーグにしようかな。ちょっと時間、遅くなっちゃうけど」

「あ、ありがとうございます。そんな気遣きづかいまで」

「気にしないでください。ママは料理作るの大好きだから」


「じゃあお留守番お願いね」

「わかった」


 きょう出会ったばかりのカイトさんと私を二人きりにして出かけちゃうんだから、ホント、ママの能天気ぶりにはあきれちゃう。……まあ、そのおかげでカイトさんと話ができるけど。


***


「あの、カイトさん。話の続きなんですけど……」

「あ、はい」

「さっきも言いましたけど、ママの父さん、私のおじいちゃんが陰陽師おんみょうじで、私はその弟子なんです」

「はい。陰陽師はあやかしとたたかうんですよね。その存在については学んでましたけど、日本に来てすぐ、いきなり出会うなんてびっくりです」


「実は私が陰陽師やってること、ママには内緒なんです。ママは私がおじいちゃんの神社で巫女みこの修行してるって思ってるんです」

「ああ、そうなんですね。ボクらやっぱり事情が似てますね」


 なんだか親近感。


「あ、それより、ソーサラーでしたっけ。見つけ出してやっつけないと学校が危ないんですよね」

「はい。ただ、今のところ何をしようとしてるのかわからないんですが……」


 カイトさんの声が少し暗くなる。


(――これから次第に深刻になっていくんだろうな)


 そのとき、ユーリがトランクス一枚で走り込んできた。


「おーいカイト。オレたち、先に風呂入っちゃうぞ」


 カイトさんが真っ赤になって怒鳴る。

「バ、バカ! ユーリ、なんて恰好かっこうしてるんだ。女性の前で!」


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