第6話
バルは少しづつ、賑わいを増やしながら僕達は良く働いた
誕生日を祝ったり、時々お店を閉めて旅行にも行った
店は変わらず忙しかった
家族も増えた
友人と飲み歩いたり、グチだって言い合った
毎日がとても楽しくて、毎年あっという間に時間が流れた
子どもは日に日に大きくなり、僕達は歳をとった
時々悩んだり、困った事もあったけど暮らしは少しづつ便利な事が増えていった
メアリーが、そろそろ僕の両親と一緒に暮らしてはどうかと提案してくれた
「そろそろ、そうだね」
僕もそう思った
父も母も、とても喜んだ
一緒に暮らすようになった
子どもの頃から最近の事まで、美味しいものを食べながら沢山話しをした
僕達が子どもの頃、父や母はとても苦労をしていた
今なら、良く分かると思った
弟の話しも、沢山とは言えないくらいはした
「元気な子に産んであげたかった」
母はそう言った
僕もそうだったら良かったと思った
やがて、父が亡くなった
母も少し経ってから亡くなった
お墓は住んでいた山の家の近くが良いと、2人共言っていた
僕もそれでいいと思い、二つ並んでお墓を用意した
父と母に挨拶をして、弟の所に行った
メアリーと一緒の時もあるし、子どもが来たり、ほとんど1人で行く事が多くなった
「やあ、兄さん」
ある日、エリックの声が聞こえた気がして振り返った
誰もそこには居なかった
僕は帰るのをやめて、お墓の近くへ行った
久しぶりにその石に触ってみた
ひんやりと冷たかった
『僕は良い兄さんじゃ無かった』
そう思った
優しい風が吹いていて、心地よい時間が流れた
「また来るよ」
僕が帰ろうとすると、また声が聞こえた
「もう、来なくていいよ」
涙が、少し出そうになった
僕は振り返れなかった
「僕はもう、ここには居ないから」
エリックの懐かしい声だった
「だからもう、ここには来なくていい」
ポタポタと涙が溢れて、止まらなかった
申し訳ない気持ちと、楽しかった記憶が沢山頭の中に浮かんできた
僕は長い間、動けずにいた
涙が止まって、ゆっくり呼吸をして、落ち着いてから振り返った
何も、誰も居なかった
「ありがとう」
僕はエリックにそう言った
それから何度か、お墓に足を運んだけれど声は聞こえなかった
『もう本当にここには居ないんだ』
そう思った
それからは、父と母のお墓参りしかしていない
「行かなくていいの?」
ある日メアリーに聞かれて、僕は良いと伝えた
「いつも行ってるから」
心配していると思って、僕は嘘をついた
メアリーはそっと頷いてくれた
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