第5話 緊張
龍希は蜂の巣になった
「龍希!!!!!!!」
ヤミが進行方向を変え上空へ飛ぶ。
「ちょヤミ!?」「あれは……龍希トレーナー!?」
ツムギとアオイも状況を飲み込みヤミの後追いのように上空に行く。
「おっ、君はSilver Variationの女の子………………いらないな、消去。」
「なっ!?」機関銃の腕をこちらに合わせ下に落ちながら銃弾をぶちまける。
「ヤミ!!!」
アオイとツムギは地面に下がりコンクリートに身を潜めるしか出来ないことを悔しく思う。
「くっそ!ふざけんなぁァ!!!」
空中で身体をひねらせて弾丸を躱すが右腕や左足に少しの傷を負ってしまう。
「この程度、、余裕」「ほぉ?」
余裕の言葉に六連は反応し周囲を見回した後ニヤッと笑う。
「ならこれはどうかな?」「何をする、、っ!?」
下に落ち地面に着くかと思う直前、まだ状況が回ってきていない目黒区には電車が走っていた。
山寺線渋谷新宿方面行き、それが死の列車である。
蜂の巣状態の龍希を背負いこちらを見ながら山寺線に身を任せる。
電線が必要なくなった2600年のこの時代、もうレールに電気を走らせる走行方法が全世界に染み付いている。だから電車の上に乗られるほどめんどくさくないことはないのだ。
「畜生……!どうやって!」「ヤミ!」
「飛び乗れぇぇぇ!!!!」
アオイとツムギが大きなトラックをアクセル全開で走らせ山寺線に併走する勢いで走る。
「よし!!」ヤミはトラックに飛び乗り山寺線を追いかける、そして追いつく。
「こっち見ろ!!」
ヤミはアオイからアサルトライフルを貰い、照準を合わせる。
「撃てるのかい?僕の背中には龍希君がいる。下手に撃ったらさらに被害が増えてしまうよ?」
「…………!」「図星だねぇ」
「でも……もう生きてないでしょ!!!なら撃ってもいいんじゃないかな!!!!!」
ヤミの脳に全ての怒りが集中する。
「貴様ァァァ!!!!!」
列車とトラックはトンネルに入る、トンネルを抜けた瞬間。
ヤミが飛ぶ、顔にめがけ拳を振るうがその拳はかわされ、六連が腕を振り上げヤミの腹に入る位置になる。
だがヤミは空中で下半身を上にあげ拳をかわす、そして肘を後ろに振り六連の後頭部にヒットし六連の足が少しおぼつく。
その瞬間をヤミは見逃さない、浮いた体を山寺線に着け地面を蹴り大きく拳を振る動作に入る、が…………
「っ!貴様どこまでもゲスだな!!!!」
六連の首には爆弾付きの首輪が付けられていた、そのタイマーを今スタートさせ、そのタイムリミットおよそ3分。
「どうせはったりだろ、龍希君を持ち帰るつもりなら爆発させたらその体はお陀仏だ。」
「ほぉ、わかってるじゃないか。でも違うな」
肘から先を上に挙げヤミに向けて見せるような形になる。
「僕はサイボーグだ。本体のコピーのな」
コピーだと?
ヤミの体にさらなる緊張が走る。
すると後ろから謎の空間が発生し、その姿はまるで
「……!時空移動装置!?」
時空移動装置、現地球からシェルター別世界を繋ぐ際に使った大型移動装置。
時空と時空を繋ぎ大きな移動を可能にする。
時空移動装置から人間の体が姿を現す。
「やぁ、こんにちは。僕は六連。苗字は言うつもりは無いよ。」
「言わなくてもわかる、『新馬六連』。あなたは政府の者だったはずだ」
「あんな腐れきった政府なんて味方になるわけが無いだろう。簡単に言うとスパイだよスパイ。」
「スパイ?」「そうさスパイだよ」
「僕のコピー体であるサイボーグを政府の者にし位を上げ、情報を引き抜くんだ」
「なぜそんなことを!?」「教えてあげよう。」
「僕は元はただの人間だが、Silvervoidに脳を改造された。政府の腐れきった脳味噌で考えた最初の育成戦闘員の犠牲者の1人とでも言おうか。」
「っ!?最初の戦闘員の生存者は誰一人いなかった!貴様がここにいるのはおかしいだろ!」
「勘がいいね!僕は国王を味方につけている。多少の報道を変えるなどお手の物」
だが誰一人として生存者がいないと報道すると人々の不安を仰ぐ、国王がそんなことを許すのか?
「気づいてそうだね、そうだよ脅しさ。それしかないだろう」
「やっぱりね、そんなくだらない方法だと思ったよ。」
着々と爆弾の時間が迫る。
「おっとあと1分だ、いいのかい?目の前で死んでしまうよ、それとも助けるかな?」
「助けるに決まってんだろ。その人は私のトレーナーだ。」
「おっと!君はヤミ君だったのか、失礼した」
「さぁヤミくん、君のトレーナー「田守龍希」君を殺すか私達に大人しく引き渡すか選びなさい」
「答えは3つ目だな、助ける!!」
六連は哀れみの目を向ける。
「………………残念な子だ」
時間が迫る。
30秒………………20秒……………………10秒………………5秒………………
ヤミの顎から汗が落ちる。その汗が地面に触れた瞬間。
ヤミが飛んだ、時速は分からないが超高速。音速を超えるレベルかもしれない
(足をこの3分間蓄えていたのか……!?)
六連は心底関心をした。
残り爆発まで0.5秒、、、、ゼロ
爆発、その爆発はとても音が小さかった。
「爆発していない!?!?」
サイボーグの六連の背中には龍希の姿はなく、その姿はヤミの背中に変わっていた。
「遅せぇんだよ、ゴミ」
「……!?」
六連の首の機械が壊されていた、爆発をしなかったのだ。
「クソがァァァァ!!!!ならこうだ!」
上半身の服を脱ぎ腹の真ん中にある大きなボタンを出す。
本体側は舌打ちをし時空移動装置に戻っていく。
「あれは自爆装置!?アオイ!ツムギ逃げ……」
大きな爆発をした。目黒区全体を覆い尽くす黒煙が立ちこめた。
アオイとツムギは何とか生還。
ヤミは全身から血を流し、蜂の巣状態の龍希を見つめる。
「龍希君……死んじゃダメだ、行くなバカ」
アオイとツムギが近づきツムギが声を上げる。
「今すぐ本拠点の医療室に連れていこう!!可能性はあるかも!」
ヤミが血だらけの顔を上げ龍希を背負う。
「すぐ行く、報告は頼んだ」「了解」
ヤミは大きく飛び品川区の本拠点に向けて向かう。
「龍希君を……死なせない!!!!」
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