第11話

フレッド殿下の変わり果てた姿に絶望して心が痛んだ。切ない思いが胸に込み上げてきますが、泣いているわけにもいかない。ステファニーは、さっそく実行にとりかかることにした。ところが――


「あれ?」

「ステファニー?」


世間の多くの人から素晴らしいと高い評価を得ているは、泣きそうな顔をしてそうつぶやいた。ポツリとつぶやく声が耳に入ってきたアランは、一目で何かおかしいことに気がついて、不安そうな顔でステファニーを見ながら声を漏らす。


「……どうして?」

「何やってるんだ……!?」


ぼんやりとフレッドを見つめながら、また小声でつぶやいた。アランには聖女の技術的なことはよくわからないけど、不満を抱くものがあったらしい。


「……」

「おい! ふざけてる場合じゃないぞ……? いつもみたいに一瞬で治してくれ!!」


黙って続けるステファニーがアランには気にいらなかった。無言のままでいる彼女にしつこく絡んで聞いてくる。いつもなら素早く回復するのに、まだフレッドの体は少しも治っていないのだ。


「今やってるから!!」


ステファニーはやり場のない怒りを言葉に吐き出した。自分はフレッドの治療に一生懸命なのに、横で騒がれては彼女の気分が悪くなるのも当然と言えよう。


「じゃあ何でフレッドの傷が回復しないんだ? 全力でヒールやってくれよ!!」


フルパワーで頼む! アランは大声で怒鳴り散らしながら指示を出し始める。ヒールを全力を尽くしてやってくれよと、ステファニーに向かって必死に叫んだ。


「私は頑張ってるのよ!」

「……嘘をつくなよ。おかしいだろう……? 全く体が治ってないだろ!!」


ステファニーは、ありったけの力を振り絞って真剣な目をして熱心に、回復魔法をフレッドに行っている。彼女の顔は、いつもよりまっ赤で大汗をかいていた。それほど限界ぎりぎりまでのところに迫った力で頑張っている。しかし、アランは怖い顔で頭ごなしに叱りつけた。


「さっきからうるさい! 集中力が乱れるから黙ってて!! 今はこれが精一杯なのっ!!」

「冗談を言うな。前はもっと凄かっただろ……? これなら俺のヒールと変わらないじゃないか!!」


全身の神経を集中しているので、怒っているような大声で叫ばれて迷惑だった。とにかくアランに静かにしろと命じた。実は初級の回復魔法くらいならアランでも使える。帰るまでの馬車の中では回復魔法を使える者は、全員でかけ続けてフレッドの命を何とか繋いで保った。


国に帰って来たので自分たちの役目は果たしたという気持ちで、あとは回復魔法の専門家である聖女のステファニーに任せましたが、その回復効果は自分とほとんど変わらないのでは? と思い始める。


「でも今は、これが限界なのよ……もう駄目だわ……助けられなくてフレッドごめんなさい……」

「自分を信じろ! 弱音を吐くな諦めるな!! まだ何か方法があるはずだ……そうだっ! 俺も一緒にやる。ヒール! ヒール! ヒール! ヒール! ヒール!」

「そんな連続でやったらあなたが倒れてしまうわ」

「構うもんか! 俺の心の支えで大切な親友のフレッドが助かれば、俺の命なんて安いもんだっ!!!」

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