啓斗POV(2)
その次の日、俺は久しぶり登校した。まぁまぁ長い間登校していなかったのもあり、いつもは挨拶されないような子にも挨拶された。まぁみんなは体調不良かなんかだと思っているだろうからな。実際それまで学校を休んだことは一回を除きほとんどなかったし。席に向かって歩いていると、つまづいて転んでしまった。「何してるの?w 久しぶりすぎて自分の席わからない?」と上から声をかけられた。見上げると玲奈が笑いながらこっちを見下ろしていた。「いや、大丈夫だって。」と言って立ち上がった。「腕擦りむいてるよ。しょうがないなあ、麗奈様が絆創膏をあげよう。」と麗奈が言ってきた。「え?いや、いいよ」と言ったがまぁまぁと言ってカバンの中を探し始めた。その時に見えてしまった。ピンクのノートが。「はーい。痛いの痛いの飛んでけ〜」と言いながら麗奈が絆創膏を貼ってきたが、「あ、うん」としか言えなかった。「反応薄w」と言われたが「あごめん」としか返せなかった。それどころではなかったからだ。
そのあとの授業はほぼ放心状態だった。なぜ麗奈があのノートを持っているのだろう?あいつは桃花のことが嫌いだし、見たくもないはずだ。もしかしてそういうことなのだろうか?と考えているとキリがなかった。昼休みになって、いつものように淵とご飯を食べ始めると、麗奈が来た。「お邪魔してもよろしいですか?」「いいよいいよ」と淵が言った。「お二人のおじゃまじゃないですか〜?」と麗奈がふざけて言ってきた。「いや全然」二人の会話を聞いてるだけだった。この会話も全て・・。思ってみれば俺は元々麗奈がどんな人だったかを知らない。二人は楽しそうに話していたが淵が、「大丈夫?全然話してないじゃん啓斗。」と言ってきた。「全然大丈夫。疲れただけ。」と返すと麗奈はこちらを見て微笑んできた。怖い。もはやほんとの笑いかすらもわからないのだ。午後の授業も当然のように聞いてなかった。
帰りも三人で帰ることになった。時間が早かったのもあり、そこら辺を歩き回った。歩いている途中で「じゃ俺ちょっと喉乾いたから、飲み物買ってくるわ。」と淵がいって、自販機を探しに行った。それを見送って俺は切り出すことにした。「麗奈さ、」「ん?」「見間違いかもしれないけど、麗奈もしかして桃花のノート持ち歩いてる?」ただ同じ色のノートだったのかもしれない。「うん、なんで?」なんで?とは。まぁそんなことだろうとは思ってはいたが。まぁ捨てるに捨てられなかったんだろうし、親にあれを見られるのも嫌だったんだろう。そうに違いない。「でもよかったよ。桃花のおかげで淵を幸せにできそうで。」 「は?」どういうことだ。何を言ってるんだ?「え?だってあのノートのおかげで付き合えたんだもん。ノートのおかげで淵のこととかわかったし。桃花のこと忘れさせることができたんだよ。まぁ私がいなくても忘れてはいただろうけど、完全には忘れていなかったんじゃないかな?まぁ啓斗くんのおかげもちょっとはあるけどね?やっぱあのノートは最高だね。」ジェットコースターの頂点においてきたものが一気に降りてきた。なんであいつは、その縛りから抜けることができたというのにまた縛るんだ。こいつはやっぱり自分のことしか考えてないんだな。お前が桃花のことが嫌いなだけだ。自分が救っているということに酔っているだけだ。まだ話していたのだろう、口はペラペラと動いていた。顔も得意そうだった。そんな顔を壊してやりたかった。もはやこいつを救い返してやろう。縛りから解放してあげるんだ。と思ったら腕が動いていた。考えるまもなく。今日じゃなかったら。ここじゃなかったら。車が通っていなかったら。そんなことしていなかっただろう。麗奈がどこに倒れてしまうかも考えてなかったのだろう。麗奈は道路の方に倒れていった。
「おいお前何してん・」ドンという音がした気がする。麗奈は俺の前に倒れていた。その後ろには、淵が倒れていた。しかし二人の様子は全く異なっていた。車が走り去っていく。俺の目に残ったのは、最後の淵の初めて見せた怒った顔だけだった。
「ねぇ ねぇってばどうしてくれるの?」麗奈が泣き叫んでいる。どうする?どうするというんだ。血を流してい倒れている淵を見て思う。俺は結局また縛ってしまったのだ。淵のことも、俺のことも、そして麗奈のことも。麗奈がスマホを使って誰かと話し始めた。その後淵は救急車に運ばれていった。
俺はその後どうしても病院に足を運ぶことができなかった。もういいんだ、俺は悪者なんだから。悪者なりに生きるしかないだろう。だが悪者には何もないことなんてない。ポリシーがあるんだ。ポリシーを破ったら悪者は悪者じゃなくただのクズになってしまう。クズにはなったら引き立て役ですら無くなってしまう。他の人からしたらクズだとしても。感情を見せてはいけないんだ。
二日後に淵が死んだという知らせを聞いた。学校から連絡が来たのを、親が伝えてきた。親は泣いていた、淵は昔から親も知っていたからだ。だが、俺に泣く権利などどこにあるのだろうか。それを聞いたらすぐ部屋に篭った。俺の家にも警察が来るはずだ。俺が話さなくても麗奈が話せば俺はみんなの悪者になるだろう。何ヶ月かたっても俺が家を出ることはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます