啓斗POV(1)
俺は学期の最初の何日かは休むことにした。淵にあってどうなるか分からなかった。玲奈とも話せる気がしなかった。淵に関しては、あっただけでなんか言ってしまいそうな気がした。本人にとっても忘れたままがベストかもしれない。そうして、家の中で漫画を読んでいた。淵から連絡が来た。「三人で遊園地行かない?」この三人とは俺と淵と麗奈のことだろう。麗奈が淵に桃花のことを言わない理由は傷つけたくないとかじゃないんだろう。正直桃花が淵が桃花のことを好きになるようにした。というのは嘘だと思う。忘れたはずなのに淵にはまだ桃花のことを彷彿される行動をすることがたまにある。これは完全に忘れてしまったわけではないからだと思う。つまり桃花という存在を思い出してしまうのが怖いんだろう。まぁそれはしょうがないと思うが。「いいよ」と返すことにする。まぁずっと家にいるわけには行かないんだ。気分転換に行くことにしよう。会わなければ実際どうなるかは分からない。そして淵が本当に忘れているのだとしたら、自分も忘れられるかもしれない。そう思ってカーテンを開けて窓の外を見る。「雨か、」窓の水滴を見て独り言をこぼした。部屋の勉強机に向かって座った。その上に置いてある写真をずっと見つめながら。
遊園地の日になった。現地集合にした。あいつらは二人できた。俺が先についていた。「おはよー」「おっす」と二人が話しかけてきた。「うっす」カップルと一緒にいることを気まずく感じそうだったが、いつもと変わらなそうでよかった。変わったとしたら俺だけなんだろう。いや、ある意味変わってないのかもしれない。久しぶりの遊園地だ。遊園地というものはあんまり好きではない。現実逃避だと思っている。夢を見ることができなかったものたちが夢をみるために行くところだと思っているからだ。夢がないと言われるかもしれないが。だが、今なら行きたい気持ちもわかる。ゲートを潜り抜けたら、頬の上を何かが流れた。あの頃から少しも変わっていない。なんてことは全くなかったが、それでもあの頃を思い出した。淵と過ごした幼い日々を。俺は何を思っていたんだろう。小さい頃だったら他のことなんてどうでもよかったのに、楽しかっただけならなんでもよかったのに。「どうしたの?」麗奈が後ろから聞いてきた。「なんでもない」見せるわけにはいかなかった。いけなかったのだ。だって変じゃないか昔の俺に戻ったら。都合のいい人間みたいじゃないか。やり直しなんてものは存在しないのだから。
麗奈の案で最初に乗るのはジェットコースターにした。並んでなかったのですぐに座れる。麗奈と淵は二人で座る。俺はその後ろで一人だ。ジェットコースターにロックがかかっているものを確認して、「行ってらっしゃーい」と従業員の方が言った。ゆっくりと登っていく。そうだね。桃花がいなくなった時に俺がそばにいるべきだったんだ。あんなノートがなくても俺のほうがわかっているんだから。記憶という名のノートがあるのだから。落ちた。そのジェットコースターは。笑っていた俺は。他の人のようなキャーではない。笑っていたのだ。一番後ろで良かった。後ろに流れた水は誰にもバレないのだから。降りてロックを外し、「あー楽しかった。」と笑っていると、淵が「おかえり」と言った。麗奈が「ドユコト?」というと「なんでもないよ。啓斗がちゃんと笑っているところ久しぶりに見たからね。」と渕が言った。ただいま。とは言わなかった。だが伝わったと思う。その背中に。
そのあとはお化け屋敷に行ったり、色々な乗り物に乗った。心からこの瞬間を楽しめた。自分を初めてこの三人として意識できた気がする。昼ごはんの時間になり、三人で遊園地内で売っているホットドッグを近くにあったテーブルに座って食べた。「淵、ストラップ外したんだね。」と俺が淵がいつも学校に持ってきているバッグを今日も持ってきていることに気づき言うと「なんか花のいろが落ちてきててさ、前も外そうと思ったんだけど外れなくて、最近またやってみたら簡単に外れたからさ。」と言われた。そっか、お前も抜け出せたんだな。麗奈も何も言わなかったが嬉しそうだった。ならいうことはないな。また縛らせてはいけないから。
「あー楽しかった」と麗奈が言った。昼の後は、三人で午前中に乗ったものにまた乗ったり、色々歩き回ったりした。海の近くにあり、晴れだったのもあり、すごくいい天気であり、景色だった。「そうだね。久しぶりに遊んだ気がする。」と淵が言った。そう、それでいいんだ。三人でずっと喋りながら帰宅した。
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