淵POV

夏休みが終わり、学校が始まった。「おっはー」麗奈がいつもとはちょっと違い照れたような感じで話しかけてくる。「おはよ」とおれが返す。特に変わったことはないが、二人の距離感は縮まった気がする。「あれ、啓斗は?まだきてないの?」とおれが聞くと、「体調悪いってよ。」と返ってきた。「そっかー」学期初めから大変だな。今日は啓斗がいないのでほぼ一人で過ごしていた。帰る時間になって幸村に話しかけた。「お前今日は一緒に帰らない?」と聞くと。「よかろう」と言ってきた。なんだよかろうって。麗奈は多分おれと帰ろうと思っていたのであろうが話しかけられる前に、誘ってしまった。なんかそういう気分だったとしか言いようがない。「幸村ってさ?夢見る?」なんて話し始めればいいのか分からずに、本題から入ってしまった。でもこいつならそらしたりはしないっだろう。「毎日見る。」結構意外だった。「そんなふうには見えないけどね。なんかそういうもの信じなさそうだし。」「夢は面白い。現実ではない?そんなことはない。ある意味自分に最も近いものだと言えるだろう。夢というものは無意識状態である時に見るものである。そこに映し出されるものは、自分が普段感じているもの。それ以外の何でもないのだ。」自分自身が見えるということだろうか?「なんでおれに話そうと思ったんだ?」「なんだろう、自分より変な人がいると思うことで自分が普通だと思いたかったのかな?」と失礼にも捉えられそうなことを言う。だがこいつならわかるはずだ。こいつだからこそ。「普通に縛られてはいけない。だが普通でないことに溺れてもいけない。自分は自分であることであり。それ以外にはなんでもないのだから。」みんながこいつが何を言っているかを分からないというが、おれは実際こいつがすごいなと思うことがよくある。人間らしくないと言えるかもしれないが。人間という生物を突き詰めた人間だと思う。ある意味。その後も色々話した。こいつはきちんと話せば返してくれる。「ありがとう。」と言って別れようとすると、「道は決まったのかい?」と聞かれた。なんだわかっていたのか。人のことを気にしていないようで。結構よくみているんだな。幸村の後ろ姿を見送った。その姿がはっきりと見えるまでは

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