淵POV
好きだ。好きでない。何が正しいのだろうか。ただ、俺のことが好きだという理由だけで人が傷つくのは嫌だ。「正直、俺は好きとかいう感情わからないけど。麗奈と一緒にいられないのは嫌かな。」と答えると、麗奈は少し照れくさそうにして、いつものような表情に戻った。「ありがとう、ちゃんと答えてくれて。」麗奈は笑っていた。「ごめん。そういうことじゃない。付き合えないかな?ちゃんと。」というしかなかった。その顔を見て。「ほんと?」麗奈は笑顔になった。「うん。ほんとだよ。」麗奈が抱きついてきた。木の間から月の光が溢れていた。肩の上に乗っかった麗奈の顔が震えた気がした。真夏の公園では蝉の鳴き声は鳴り止むことがなかった。
その日の夜、俺は色々考えながら眠りについた。
前回見た夢の続きのようだ。その女子と一緒に帰っている。公園に着いた。今日よりは明るく、虫の声も微かにしか聞こえない。今日麗奈と一緒に行った公園だ。「この木がなんの木だか知ってる?」二人で木の幹に寄りかかって座っている時に相手が聞いてきた。「え?」なんでこんなことを聞くのだろうか。「桃の木だよ。」「なるほどね。合ってるじゃん。」口から言葉が出てくる。「ありがとうね。淵。最初で最後の彼氏が淵でよかったよ。色々一緒にできて。」いきなり感謝されると怖い。「何言ってんの?」「ごめん。もう時間だよ。」相手が俺の手を繋いできた。「大好きだよ。」俺の感覚が薄れていく。最後にうっすら見えたのは相手が俺のバッグに何かをしているところだった。俺は完全に気を失った。
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