第16話 鯉

「鯉」


庭園池には鯉がいる。


池の際に立ちスケッチしていると、餌がもらえるのかと群がる鯉。

遠くにいても、食べ物求めて集まってくる。

バシャバシャと水音を立てて、我先にと、騒ぎがひどくなる。


地味で黒っぽい鯉が先頭に、顔を見せる。

長い年月生きてきたのか体が大きく、太い横腹には白っぽい傷もある。

胸ビレは、千切れて二股三股に分かれている。まるで手のひらだ。

池の斜面、浅い水際に、両の胸ビレを腕立て伏せのように顔の横にL字に立てて、口を最大限にあけ、パクパクする。


私の方を見てくる。


他の鯉もつられて、口をパクパク。

互いにぶつかり合い、上に乗り上げたり、大暴れだ。


水面は白く泡立ち、水しぶきがあちこち舞う。

私の手にしたスケッチ帳は、水滴がいくつもかかって、紙面が波うってしまう。 紙が丸い水滴の形で盛り上がる。


鯉もいい数集まると、大した力になる。

池のそばの石段は、水浸し。

忽ち大きな水たまりとなる。


鯉あつめ立ち姿にも大騒ぎ

鯉のうねりが何かの予感

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サイズB6 戯画実(ぎがみ) @ichijiku-neko

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