2日目 逃げる
なんてことのない話である。
僕の通う大学は海の近くにあるため、大学の窓から地平線に続く海の風景をみることができる。その青い大海原を見ながら学校生活を送る日々を僕は気に入っている。
だが、気に入らないこともある。
人影だ。数え切れないほどの今切られたかのような鮮やかな血のような色をした真っ赤な人影が外を走っているのを見るのだ。朝でも昼でも夜でも。ふと窓から海の方を見ると時間を問わず現れる。
現れるだけならたいした事のない、よくある話なのだろう。
だが、赤い人影は僕の学校から海に向かって走っていく、何かから逃げているかのように。海に救いを求めているかのように。その逃げ方は大人が子供を押し退け、転んだ人を踏みつけるような逃げ方だ。
大学のある場所は戦時中爆撃があったや元々実験施設だったとか、そういう血生臭い歴史があったという記録は残っていない。それに、同級生や先生に聞いても見たことがないらしく、そのようなものが現れる理由もわからないという。
だが、この話をしてから下宿先で私物が勝手になくなっていたり、後ろに人の気配を感じることが多くなってきた。おまけにその気配を感じた後は海の潮の香りが欲しくなり、足が海の方へと自然と向いてしまう。
僕もいつか逃げなくてはならない時が来るのだろうか。
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