17話:テストプレイ
小倉からゲームの概要を聞かされる。
今からやるゲームは横スクロールアクションというジャンルのゲームだそうだ。
「じゅ……準備、でで出来たっす……」
ソファーに座らせてもらった俺の横に、いつの間にか座っている小倉がパソコンを俺に向けた。
デスクトップ画面からウィンドウが開き、壮大なBGMと共にロゴが表示され、タイトルの文字羅列がデカデカと現れる。
「おお……凄いな! なんかそれっぽいぞ!」
「な、なんか……タイトル画面でそんな反応されると、プレッシャーががが……」
「小倉……さんが作ったのか?」
「せ、先輩なんだからよ、呼び捨てで良いっすよ……自分はプログラム担当っす。大野先輩もプログラム、絵はカオちゃん先輩。シナリオがトモちゃん先輩っす」
カオルと中村先輩の事か。
それにしても俺より一つ下のはずなのに、ゲームのプログラムを組めるなんてたいしたものだ。
普通はそもそもゲームを作ろうとすら思わないからな。
「と、とりあえずプレイをお願いするっす」
「ああ、そうだな」
小倉の視線を背中で受けながらマウスを手に取る。
「これどうやって遊ぶんだ?」
「はじめからって書いてある所をクリックすれば始まるよ」
言われるがままにカチカチと押してみる。すると、画面が暗転しテキストが表示される。
「おお!」
またそれっぽく見える度に感動で声を上げてしまう。
しばらくしてカオルが描いたであろう男の絵や写真を使った背景などが映し出される世界観の説明や中世ヨーロッパ風の人々が登場し会話劇が繰り広げられる。
……
しばらくクリックし続ける。
……
しばらくクリックし続ける。
……
しばらくクリックし――
「なあ……さっきから文章ばっかり出てきてゲームが始まらないんだが、横スクロールアクションだよなこれ?」
「そおっす……申し訳ないんっすけど、しっかり読み進めてほしいっす」
言われるがままクリックして読み進めていく。
◆◆◇◆
5分を過ぎ。
長い会話劇が終わり、場面転換しストーリー解説を経てからからようやくアクションパートにゲームが移行した。
「長えよ! どんだけ読ませるんだよ! それにシナリオも面白くないだんよ! その割にこのアクションは操作感よくてちょっと面白いのが腹立つ……はっ!?」
あまりにも苦痛な時間を乗り越え、解放された感情が噴火してしまい思ったままを制作者の前で叫んでしまった。
「い、いや違うんだ! 面白くない訳じゃなくて――」
俺が取り繕うと小倉へ顔を向けたとき、
「キタ――――――!!」
何故か嬉しそうに飛び上がった。
目を輝かせてズイッと顔を近づける。
「やっぱりそうっすよね! これ、絶対面白く無いっすよね!」
「い……いや……その」
「特にゲーム起動から世界観の話とか永遠と話されてキツいっすよね! 自分キツすぎてデバッグ作業もうしたくないくらいヤバいと思っていたんすよ!」
これは……寧ろ本音を話してほしい話か。
なら遠慮無く言った方が良さそうだ。
「あ、ああ……まず物語の冒頭で世界観の説明は悪手の典型例だよな。有名なスペースファンタジー映画の冒頭で世界観のテロップが流れてくるけど、アレは読ませるのを前提には作っていない。これから広大な世界の話が始まるんだと視聴者に示す演出面を強くしている謂わば引きを重視してる訳だしな」
「おお!」
「あと最初から登場人物が8人一気に出てくるのは多過ぎる。覚えきれない誰が主人公でモブキャラなのかわからなかった」
「おおおお!」
「そして話が単調だ。日常パートが長い。キャラクターの関係性を描いてるのかもしれないが事件が起きないまま今さっき知ったばかりの奴らの身内話を永遠と聞かされ続けるのキツい……面白いと思ってやってるなら逆効果だ。ここまで面白くないことを正確にやってしまうのは逆に凄いぞ!」
「おおおおおお神ぃ!」
俺のダメ出しに盛り上がる小倉。
「最高っす! カオちゃん先輩から聞いていたけど
「どきゅんってなんだ? 一応まあ、映画をよく観る素人意見だから対した話ではないぞ?」
「それが欲しかったんっす!」
目をウルウルさせながら小倉が語る。
「このクソシナリオを書いたのはトモちゃん先輩なんっす」
「えっと……中村先輩って言ってたよなか? 部長の?」
そう聞くと小倉は頷く。
「横スクロールアクションパートがメインなのに、頑なに設定を説明したがって絶対面白くないゲーム構成になっているっす。これでは話が面白ければ救いはあるのですが無いっす! 一応女性向け公爵夫人ものっていう言い訳で男性は面白いって思うか微妙っすけどクソっす! 悲しいぐらいクソ・オブ・う○ちっす! マジでう○こ味のう○こっす!」
大学生とは到底思えない語彙力の低い罵倒っぷり。
「大野先輩はトモちゃん先輩は女性キャラの絵柄が可愛いかしか観て無いっす……カオちゃん先輩は何でもかんでも面白いっていうミーハーの鏡みたいなガバガバストライク判定で、この長いシナリオのつまらなさに気付いてくれる人が誰も居なかったっす……先輩達だから自分指摘出来なくて……ずっとモヤモヤしてたっす!」
俺よりも相当鬱憤が溜まっていたのだな。
「トモちゃん先輩がもうすぐ来る。DQN先輩にお願いがあるっす! トモちゃん先輩にゲームのシナリオがクソつまらなかったって感想を伝えてほしいっす!」
「はぁ!?」
唐突に難易度の高いお願いをされる。
「いやいやいや! ほぼ初対面……どちらかというと印象が悪いから俺には無理だ! 印象良かったとしてもどうやって伝えるんだよ!」
「自分がDQN先輩にゲームをテストプレイしてもらったって振るんでおにゃしゃっす!」
「いやでも!」
「おにゃしゃっす!」
頭突きレベルで必死に頭を下げる小倉。
いや、それでもこれから慎重に中村先輩の機嫌を窺いながら神瀬フウリの所属する研究室を教えてもらう流れなのに……
その時だった。
「小倉いる~? 新しいシナリオ書いたか……」
部室の出入り口から聞き覚えのある女性の声が聞こえそちらを見る。
ロングの髪にナチュラルにメイクをした社会人のOLにも見える大人びた容姿。
そして、一度見たことがある。
神瀬フウリと一緒に歩いていて、俺をナンパと勘違いした女が――
「ぎゃああああああ!? しししししっしし知らない男ぎゃああああああ!?」
初対面の小倉と同じような叫びを上げる。
ああ……また面倒くさくなるかもしれないと確信した瞬間だった。
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