📖第22話 ふたりで歩く未来

杉見未希

第1話ふたりで歩く未来

季節は、ほんの少しだけ変わりはじめていた。

夕暮れの風が頬をなでる感触も、どこかやわらかい。


私とあなたは、いつものように並んで歩いていた。

でも今日は、言葉よりも沈黙の方が多かった。

それでも、不思議と落ち着く。


あなたの歩幅に合わせた足音が、心地いいリズムになる。


「また、あの喫茶店行こうか」

「うん。あそこ、落ち着くよね」


ほんの短い会話なのに、胸の奥にじんわりと温かさが広がる。


ふと吹いた風に、私は少しだけ切ない気持ちを覚える。

——この時間も、いつか終わりが来るのかな。


でも、隣にいるあなたのぬくもりが、その不安をやさしく包み込んでくれる。


「これからも、こうして歩けたらいいな」

不意にあなたがそう言った。

私は驚いて、すぐに笑った。


「うん……ずっとね」


夕暮れの街灯が、私たちをやわらかく照らす。

影がゆっくりと伸びて、やがてひとつに重なった。


——この道の先も、あなたと。

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📖第22話 ふたりで歩く未来 杉見未希 @simamiki

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