第4話
最後の学校に着いた途端、屋上のカオスに気付き思わずコーラを噴き出して笑い転げる彼女。いや、確かにこれはブッキングしたらさぞかしシュールコメディだろう。
「こっちは〜…お? んぶふぉ!?
ハーレムじゃん!? やっべ! ガチハーレムってるぅ!
すんげー! あちこちハーレムグループがブッキングしてんじゃん!
しかも何か男女どっちもストーカーがぞろぞろとトーテムポールよろしく壁から覗き込んでんのシュールぅ!
ハーレムが複数ブッキングしてるせいか、ストーカーの数もハンパじゃないしぃ!
ヤッバ過ぎて笑えるぅ! アッハハハハ!」
これまでの屋上ブッキングを上回るシュールなブッキングカオスには流石の彼女も空中でローリング爆笑が止まらない。
「やっべ! マジやっべ! ラブコメでこんな笑える展開あるとは思わなかったわ!
そっかぁ、それぞれのカップル視点だと人が居ない空間でやり取りしてる切り取りシーンに見えるけど、時系列で俯瞰的に見るとこんなにブッキングしてたのね〜!
いやぁ、下手なマンガ見るよりおもしれー発見にビックリよ〜。
この世界の作者はもう少しキャラと舞台の整理した方がいい気がするな〜こんなの愉快過ぎるってぇ!」
ヒィヒィしながらそこまで言い切ると一転して真顔に切り替わる。
「でも、これは1回見て爆笑するだけでじゅーぶんかなぁ?
次見てももう笑えない気がするしぃ。ホーント暇つぶしマジどーしよ」
そう言いながら街を見下ろしていたが他に不自然な現象が起きていた事に気付く。
「そーいや舞台はこの街だけで完結してんのかね〜?
飛行機やヘリが飛んでんのさっきから見てないし、何なら空中って言う高位置ポジ視点で見てんのに海も山もない。
ラブコメ青春イベントの舞台装置である海と山ないとか有り得ないですけどー?」
よく見ると道路と線路の配置も何処かおかしいと感じる何とも言えない位置にあった。
よく見たら学校と主人公達の住宅エリアを囲む形で複数の繁華街が乱立していたのだ。
「何この謎マップ配置〜! ちょーウケるんですけどー!?
しかも繁華街まで時代ごとに分けてるとか何考えて作ったんだよー!?
いや、ガラケーすらない時代の学生が居てもおかしくない繁華街は必要だけどさー必要だけどもさー?
なーんで予備の如く同じ時代の繁華街がそれぞれ2・3個ずつあんのさ!?
もーこれ…それぞれの時代の主人公達、街の外に出る必要ないよね?ってぐらい鬼囲みしてんじゃん!
どー考えても街の外エピソード全く考えてないね!?
青春の思い出作りがゲーセンとかカフェとかファミレスだけで終わっていいんかい!?
図書館や映画館もあるんだろうけどさぁ!?
神社も友達とおしゃべりエピソードする為だけの小さい神社しかないし!
図書館以外かなりお金使う思い出作りになるよなぁぁ!?
流石に読者もそんな金食い青春をそこまで求めてなかったと思うよ!?」
食料調達には都合いいけどさぁ!?と叫びつつもコーラを飲んで自分を落ち着かせる彼女。
「…っぷはぁ〜、そもそも自転車で行ける距離に青春の思い出作りになる自然があると思えないんだよなぁ。
こーれ作者自身、そんな思い出ないから意識にすら浮かばなかったとかそんな切なぼっちオチかぁ?」
本来ならあって当たり前の青春舞台装置である海と山が全くない事への言及が止まらない。
まぁ、ツッコまれるのは当然だろう。バイトの出来ない年齢の学生が遊べる手段や場所など限られているからだ。
如何に小遣いを使わずに遊べるか?
如何に青春を全力で堪能出来るか?
主人公達の年齢的にその範囲での青春を想定されるからだ、一般読者からすると。
特にファンタジーやらSFやら凝った世界観にするんでない限り、主人公の行動範囲やパターンは比較的現実に近い。
現代を舞台にした青春ラブコメである以上、富豪生まれなどよほど突出した設定にしてない限りは、現実の学生とさほど変わらないのだ。
小遣いの悩みも、遊べる手段の悩みも、その場所の悩みも、遊び相手の悩みも。
青春ラブコメである以上、青春関連は工夫を重ねなければ読者に青春を感じさせるのは難しい。
それを手抜きして怠りまくった結果出来たのが彼女が滞在させられているこの世界である。
都会の学生の青春はこんなもんだろ?と言う思考が透けてみえる世界である。
んなこたぁない。都会の学生だって小遣い使わず楽しくやれるなら、それにこしたこたぁないだろう。
出来る限りお金使わず仲間と遊んでワイワイやれる方が楽しいに決まっている、使わなかった分の小遣い残るなら尚更。
読者はそう言う創意工夫と試行錯誤の青春を見たいのであって、無限お金で全て簡単に解決する青春はそもそも求めてはいない。
中学生が青春と掛け離れた大人なお金の使い方してどうすんだ?と言う話である。
話は脱線したが彼女は先程からそんな青春ラブコメとは〜の持論を愚痴語りしていたのだ。
ボッチ講釈している彼女もそれはそれでイタい存在なのだがその自覚は全くない。
「やかましい! アタシはイタくないわ!
……なーんか凄まじくイラッときて叫んじゃったけど、また変な電波を拾ったかな〜?」
コーラも飲み終えたしもう見るもん見た!と言わんばかりな勢いで胡座姿勢だったのを直し、別の繁華街へ緩やかに飛んで行く。
1週間滞在縛りが終わるまでこんな生活なのだろう。
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