第3話
「え゙…コレ人の体で再現しちまえるの? バケモノじゃねぇ、か?
お、おおおおめぇ! ホントに人間なのかよ!?」
「ん〜恐らく種族として問われてるのだと思うけどキミ達が分かる分類って奴で言うなら、【渡り鳥種凡人類型】って奴かねぇ?」
「は? 何小難しい言葉並べてんだ?
俺が聞いてんのは人間かどうかだぞ?」
「普通ならそれでいいんだけどね?
見ての通りアタシの力は普通と違うからさぁ〜?
人間と変わらない姿だから凡人類型って分類されてるわ・け。種としては完全に違うから型の方になってんの。
どぅーゆーあんだすたぁーんど?」
「なっ!? ば、バカにしやがって!
チクショウ! 俺だけじゃ勝てる気がしねぇ!
男らしくねぇが背骨折られて下半身ダメにされた舎弟のカタキは取ってやんねーとなんねぇからな!
親父に泣き付くのマジで情けねぇがそんな事言ってらんねーからよぉ!」
「へ〜キミって意外と子分思いの兄貴分だったんだね〜。
キミは特別に背骨折らないようにボコってあげるからお仲間呼んどいで?」
「ぐあぁぁぁっ! ちっくしょおぉぉぉ!」
ヤケクソに襲いかかる兄貴分を殴って動きを止めて利き腕を残し、他の手足を丁寧に折った後はスマホで助け呼べるよう転がして前回と同じく財布漁り。
完全にモンスターのドロップと同じ扱いである。
「よしよし、お金ケッコー持ってんじゃ〜ん?
これでしばらくご飯に困らないってもんだよ」
「ぐぅ…痛ぇ……お、まえ、親に泣きつけばメシ食える、だろうが!」
「残念ながらこの世界にアタシの家族は存在しないし、戸籍も存在しないんだよね〜。
だからアタシをそう言う線から特定しようとしても不可能とだけ言っとくね?」
「…は? いや、オメー…家族と戸籍ねーとかどう言う生まれだ、よ?
どう考えても俺の舎弟共より悲惨な生まれだろ、それ…」
彼女からしたらこの世界に遊びに来ただけの立場だから単純にハナから存在データないって意味で言ったつもりだったが、それを知らない兄貴分は彼女は壮絶な生い立ちの持ち主だと勘違いしてしまう。
流石に渡り鳥のルールとして、世界間移動やら異世界やらの話を現地民に伝えるのは現地の世界の防衛機構を刺激する事にも繋がるらしく、よろしくない扱いなので仮に彼の勘違いに気付いても訂正は出来ない。
実は世界が書物として存在している世界なんて聞かされても誰も幸せになれないからだ。
ヤンキー兄貴にシリアス(笑)な謎と勘違いを残すだけ残して彼女はハイジャンプしての壁走りで、現場に駆けつけるであろう救急車や途中の通行人に見付かる事なく颯爽と姿を消す。
彼女は全く力を隠す気はなく、無自覚人外ムーブで滞在をやり過ごすつもりのようだ。
「さて、とかなり早めにモーニング兼ねたランチ食べて軽く運動したから暇潰しに学校覗いてみるか。
今なら定番の屋上ランチで何かラブコメ見れるっしょ」
朝あれだけツッコミ入れていたラブコメをわざわざ見に行くようである。ダメ出ししまくったラブコメを何故見に行くのか語り手の自分には分からないが。
(そこ! 散々ラブコメにツッコミ入れてたのに見に行くのかよって言うなし!
アタシのいたネオジャパンと近い世界観だからってゲームやマンガがすんなり楽しめるとは思わないで!
常識や価値観や法律が違うとスムーズに楽しめないのよ! )
「…はっ………何か変な電波拾った気分。なんだろ…アタシを観察してる誰かに行動をツッコまれた気がしたんだよね〜。
ま、この世界を読んでる読者がアタシって存在に気が付く訳ないんだけどホント変な気分〜」
あ〜やだやだ〜と独り言を言いながら壁を強めに蹴って飛行移動に切り替える。認識関係のスキルはカメラにも映らないのだから便利なものである。
とりあえず1番近い中学校の屋上を覗いてみると、昭和チックな制服の着こなしと髪型の少女がそれぞれの友人連れてポツンポツンと離れて弁当を広げていた。
その階段のある出入口を挟んで反対側は男子が少数でつるんで食べながら静かにはしゃいでいる。
「…いや、これどう言う状況?
誰が主人公で誰がヒロインなの? まさかとは思うけど、全て主人公とヒロインが同性の友達に恋の相談か片想いを揶揄われてるシーン?
え? いや、すんごいブッキングしてね?
これでよくお互い気が付かねーな!? スゲーなご都合主義!」
気付かれない事をいい事に盗み聞きすると、まさかの全員ヒロイン&主人公の友人飯タイムだった。
何で1つの学校にここまでイベントをブッキングさせたのか、この世界を生み出した作者すらも分かってないのかもしれない。
「次は平成っぽい学校覗いてみっか〜。この昭和っぽみを引きずった上で何か要素増えてると思うけど〜。
んでもってコッチもブッキングしてんだろ〜な〜プククッ」
主人公とヒロインが屋上に大集合していた光景を思い出し、笑うのを堪えようとして出た変な笑い声が口に出る。
「さて、と…こっちの屋上はどーなってるかな?っとぉ」
彼女がキョロキョロ探す必要もないほど屋上はかなり騒がしい空間になっていた。
「あちゃー喧嘩ップルやツンデレップルばっかりじゃ、喧しいのも当然か〜。
何で誰も他のカップル気にしないのか謎過ぎる……あ、また増えた。
それにしても、さっきの学校より酷ぇブッキングでマジウケる〜!
これでどう話まとめるつもりなんだろ、ここの作者は?」
観客よろしくコーラ片手にツンデレ観戦を楽しんだ後は最後の学校へと移動。
ツッコミつつも楽しんでいる彼女の図太さには感心するばかりである。
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