第2話
「ん〜やっぱ即金バイトないかぁ。しょーがない、どうせ商店街か繁華街でカツアゲテンプレあるだろうからそこでお金賄おっと〜。
あ、カツアゲテンプレと言えば、通学路にある人通りのない空き地とか路地裏もそうだっけ?
よし、この時間なら主人公っぽいヒョロガキをカツアゲしてるヤンキーから徴収しちゃおっ」
おっ財布おっ財布と口ずさみながら該当ポイントを目指す物騒な彼女。
世界観に合わせて目に見える武装はしていないが、口ずさんでる彼女の拳がホンノリ光り始めているのが見える。
ついでに膝から下も同じくホンノリ光が覆い始め、カツアゲ現行犯が見付かる頃には完全に覆われていた。
これが今の彼女の戦闘モードなのだろう。
「お? 流石テンプレ詰め込み世界なだけあるね! 早速金ヅル見ーつけたっ!」
そう言いながら足音も立てずに近くのブロック塀の陰に降りると同時に地面に凄まじい圧を掛けたダッシュで嬉々とした顔で飛び込む少女。
カツアゲ現場に飛び込むと同時に両足ジャンプに切り替え、見事な捻り入り水平ドロップキックで3人を1m以上吹き飛ばしてみせる。
見事吹き飛ばされた3人はよほどダメージが大きかったのか全く起き上がれず、運良く巻き込まれなかった1人が慌てて彼女に向き直り威嚇。
「な、なんだぁ!? てめぇ! そいつの仲間か!?」
「のんの〜ん♪ 丁度よく金ヅルクン達がこのカモ少年にタカって集まってくれたから狩りに来ただ・け♪
アタシのお財布は多ければ多いほどいいからね!」
「ふ、ふざけやがってぇぇぇ!」
彼女の挑発に乗ってキレて駆け寄りながら腕を振り上げるも、先程の超人的スピードでドロップキックをこなした彼女からしたらヒラヒラ飛ぶ蝶と変わらない遅さな訳で。
余裕で振り下ろされた拳を避けつつ素早く後ろに回り、ヤクザハイキックで腰を思い切り蹴り飛ばす。
これでヤンキー4人の腰は完全に死んだであろう。
「キャハッ♪ イキってた割りに弱ーい体脆ーい♪」
そう笑いながらヤンキー達のポケットから財布を取り出しお札だけ全て抜き出し、残った財布を地面にポイ捨てすると抜き出したお札を数え始める。
「あ、カモ少年」
「えっ!? カモ少年って僕ですか!?」
「キミ以外に誰がいんのさ? とりあえずさぁ、この金ヅル君達にいくらカツアゲされたの?」
「え、あ、4000円…です」
「ふむふむ…はい、カモ君の分4000円」
「ええっ!? い、いいの? 返して貰えるのは凄く助かるけど…」
呻いている山になってヤンキーをチラ見しながらも4000円キッチリ受け取る少年。カツアゲされるほど気弱に見えて実にチャッカリしている。
「元はカモ君のお金なんだからいいんじゃない?
カモ君は奪われたお金戻ってHappy♪
アタシはお金稼げてHappyHappy♪
…OK?」
「おっぉぉぉっ、OK、ですっ」
最後の低い声による言葉に謎の圧を感じたのか、首振り機能付き人形の如く激しく振って大人しく受け取り自分の財布にいそいそとしまう少年。
やはりチャッカリしていても気弱は気弱である。
「んじゃ、アタシはこれから何か食べに行くから! じゃーね〜」
「あっ! えと、助けてくれてありがとうございました!」
律儀にお礼を言う少年にヒラヒラと手を振りながら颯爽と離れて行く少女。カッコよく別れたが、彼女の頭の中には何を食べようかしか考えていない。
しばらくすると早朝から開けてる喫茶店からお腹をポンポン撫でて満足げな1人の少女が出て来る。
そうそう、カツアゲヤンキーから金を巻き上げたあの少女だ。
「ふー! この世界のモーニングセットも凄かったなぁ〜。
せっかくアタシの居た世界に近い世界だし、色々と買い足しておきたいんだよねぇ。ポテチとかコーラとかそろそろ恋しくなってきた頃だし?」
お腹を撫でながらそう独りごちてるとこっちを睨み付ける強モテの不良が近付き、首をクイッと動かし来いと言わんばかりの動作で彼女を何処かに案内しようとしてきた。
案内されたのは長い事使われた気配のない廃ビルで、この中に入れと顎をまたクイッと向ける。
彼女はと言うと不意打ち対策としてこっそり体に力を流し、既に戦闘態勢完了である。
ビルに入り奥まで歩くと古びたデスクに座った1人の男を中心に各種鈍器を肩に置いて威嚇する高校生くらいの年齢のヤンキー集団だった。
「おぅ、ちぃと歩かせてすまんなぁ? 確認してぇ事あってよぉ?
2時間くれぇ前に俺の舎弟4人ボコったのオメーだよなぁ?
ボコられた舎弟から特徴聞いてっからしらばっくれんなよ?」
「4人…あ〜、あの金ヅル君達の事かぁ。手加減はかなりしたつもりだから木っ端微塵にはなってないはずだけど?」
座っていた男がようやく話し出したと思ったら、彼女が金ヅル扱いした不良の事。
人数を言われて朝狩りたてのヤンキー4人の事だと思い出したが、とやかく言われるとは思ってもいなかったのか首を傾げていた。
「ふっざけんなよ! アレの何処が手加減しただぁ!?
背骨砕けて全員二度と歩けねぇ体になっちまったじゃねぇか!
手加減っつーなら、せめて手足や肋骨折れる程度で済ますスジくれぇ通せなかったのかよ!」
「えー? 木っ端微塵になってないの本当に手加減なんだけどなぁ?
んーじゃあ、そこの使い物にならない壊れた業務用スチールデスクで証明するか〜。
それじゃあ、よーく見ててね? んしょっと」
どうやら人間基準で重傷だったらしく兄貴分が出て来たという事のようだ。
だが彼女は納得いってないのか、手加減無しの見本として廃材として打ち捨てられていた業務デスクを軽い一言と共に放り投げ、身構えすらしない投げやりアッパーで殴ると粉末か!?と言うほどのレベルであっという間に木っ端微塵となる。
あのスチールが、である。
そんな現実的に有り得ない光景を目の当たりにした兄貴分とその手下はと言うと、兄貴分の方は顎が外れる勢いで口を開いて放心し手下達はと言うとあまりに驚愕な光景に腰が抜けたのか地べたに座り込み同じく放心顔。
これはもう完全に恐怖の沈黙である。
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