第2話 帰り道
教室を出ると、窓の外に沈む夕日が見えた。
校庭からは、部活を終えた生徒たちの声が風に混じり、グラウンドの砂の匂いが漂ってくる。
「なあ悠真、美桜ってさ、やっぱいい子だよな」
颯太が自転車を押しながら、ふいに口にした。
その横顔はいつも通りで、悪気もなく、ただの何気ない一言だった。
胸の奥がざわめいた。
だけど僕は、努めて平静を装う。
「……そうだな」
笑いながら答えた声が、自分でも少し震えている気がした。
颯太は気づかない。
夕日に照らされた彼の笑顔は、まっすぐで、揺るぎない。
――その笑顔に、美桜が惹かれるのも無理はない。
ポケットの中で、手が勝手に拳を握りしめていた。
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