📘第20話 ちゃんと、言葉で伝えたい

杉見未希

第1話 ちゃんと言葉で伝えたい

「……あのね」


放課後の教室みたいに静かな喫茶店で、わたしは、コーヒーカップを持ったまま声を出した。

拓真さんが、そっと顔を上げる。


「ん?」

「わたし、うまく言えないけど……あのね、すごく安心したの。この前の夜、“いつでも大丈夫だよ”って言ってくれたの、嬉しかった」


拓真さんは、何も言わずに、ただうなずいてくれた。


「でも、ちゃんと……言葉にしたいなって思って」

わたしは、少し呼吸を整えてから、言った。


「わたしね、あなたと一緒にいると、“自分でいていいんだ”って思えるの。それが、すごく大きくて、あたたかくて……なんだか、ありがとうって、言いたくなるの」


拓真さんは、目を細めて、笑った。

「それ、僕のほうも同じだよ。美羽さんといると、気を使わなくていいし、言葉がなくても、ちゃんと通じてる気がする」


「……でも、言葉があると、もっと安心するね」

「うん、そうだね」


わたしたちは、笑いあった。


──ちゃんと伝えるって、怖いけど、でもあたたかい。

この気持ちを忘れないように、きちんと声に出して、手渡しのように届けていきたい。


ふたりの時間は、ゆっくりと、でも確かに進んでいる。


想ってるだけじゃなくて、あなたにちゃんと伝えたくて。

“通じてる”って思っても、やっぱり言葉にしなきゃ伝わらないこともある。


こわいけど、ちゃんと伝えたい。

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