第4話 次は魔法使い殿

「おい……今の、見たか?」

「指で剣止めたぞ……ていうかつまんでた……指で……」

「いやいや、ありえん。ただの目の錯覚だろ」


見物していた兵士や冒険者、町の人たちまでがざわつく。

勇者は、ひとつ咳払いをした。


「次!魔法使いミレーヌ。君にも出てもらおう」


華奢な女性が前に出る。杖を握りしめ、険しい目をしている。


「……名も知れぬ、どこぞの、おじいさん。ライナは、まぐれで倒されるような弱き者では無い。だから全力でいく」


「ほっほ。全力大歓迎です」


ミレーヌが詠唱を始めると、炎が渦を巻き、巨大な火球が生まれた。


「いけぇぇ!」観客がどよめく。

「さすがは勇者パーティーの魔法使い!」

「これには爺さんも黒コゲだ!」


『ミレーヌやりすぎだろう……ライナに打ち勝ったあの老人なら大丈夫だとは思うが……』


猛スピードで火球は炸裂――した、はずだった。

モクモクとした煙が晴れると、

サコンはその場に立っていた。髭の先すら焦げていない。


「ふむ。悪くない火加減じゃ」


「う、嘘でしょ!? 防御魔法も結界もなかったのに!」


サコンは言う。


「わしはただ、火の流れを読んで、ほんのちょっと横にずれただけですぞ」


見物人が一斉にざわめく。


「読んだ!?あんな大火球を!?」

「いや、まさか……こんなじいさんが?……」


ミレーヌは顔を真っ赤にして杖を振った。


「で、ではこれならどう!氷嵐!」


氷の槍が何十本も飛ぶ。しかしサコンは――


「ほいっ、ほいっ、ほいっ」


デコピンで一本一本弾いて地面に落とす。


「おじいさん……おかしいです!触れさえすれば凍り付くはずなのに、魔術的に説明がつきません!」


「うーむ……わしにも理屈は、よくわからんですな……???」


サコンは少し顔を赤らめると、真顔で首をかしげるのであった。

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