第3話 まずは剣士殿
勇者の提案で、急ごしらえの面接が始まった。
「では、実技を見せていただきましょう。まずは剣士のライナと模擬戦を」
ギルドの広場には興味本位の見物人まで集まってきた。
「おう、任せろ!」
筋骨隆々の若武者、剣士ライナが木剣を構える。
「じいさん、悪いが本気でいくぜ。俺は勇者パーティーの切り込み隊長だからな!」
「ふむ。良い、お心がけじゃ」
サコンは腰を落とし、両手を前に出した。――素手だ。
「剣持たないのかよっ!」
「長年、剣の修行もやっておりましたが……ようやく昨日、素手が一番得意と気づいたところです」
――審判役の勇者が手を振り下ろすと同時に、ライナは踏み出し、木剣が風を切る。
「ほいっ」
サコンは木剣を折らぬよう“やさしく”指先で摘んだ。
「え?」
見物人が凍りつく。ライナ本人も凍りつく。
「ぬしの剣筋、悪くはない。ただ一寸、腰が浮いておる」
そのままサコンは、ライナの木剣を“返却”するように軽く押した。次の瞬間――
「うわああああ!」
ライナは大きく宙を舞い、地面にくしゃりと落ちた。
勇者が駆け寄る。
「ラ、ライナ! 大丈夫か!」
「……いったい何がどうなった?」ライナ本人も何が起きたのかわからない様子。
「ほっほ。ライナ殿ほどの才の持ち主であれば、あと10年も修行されたら、わしとて危ういです」
サコンは、にこやかに笑うと、そう告げるのであった。
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