第2話 門前払いは承服いたしかねる

「畑でも耕していろ」と言われたサコンは肩を震わせた。


「冗談を言わんでくだされ。わしは畑に種を蒔いたことはない。蒔いてきたのは武の種のみでございます!」


門番は苦笑し棒きれを軽く構える。


「おじいさん、本当に帰ってください。勇者様方も暇ではございません。力づくで追い払いますよ?」


呪文を唱えると門番は小さな炎の玉を出す。


「なるほど。力づくとは、こちらとしても手っ取り早い。では“試験”がわりに……」

サコンの目がぎらりと光る――「ほいっ」


軽く手で払えば、火球は勢いよく門の外へ。

ちょうど市場へ向かう山羊の群れに直撃した。


「めえええええ!!」辺りは大混乱。二人は青ざめる。


「ま、まずい!山羊が暴走する!」


「力加減を間違ったようじゃ!わしが止めます。」


サコンが軽く足を踏み鳴らすと、地面が『ドドンッ』と鳴り、

山羊が一斉にお座りした。


呆然とする門番にサコンは胸を張る。


「どうですかな?わしは役に立ちますぞ。仲間に加えてくだされ。」


「……ただの偶然ですよね?」


門番の額に汗が浮かぶ。


「――なにやら騒がしいと思えば……おじいさん、あなたは一体?」覇気を纏った人物が話しかけてくる。


サコンは深々と礼をする。


「八十年以上、修行だけをしてきた男にございますが、今更ながら世の役に立ちたいと思い馳せ参じました。勇者様、ぜひ仲間に!」

 

勇者は苦笑いしながら言った。


「……とりあえず、お話を伺いましょうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る