#5 あんまり好きじゃないんだけど
一方、こちらは女子風呂。男の夢が...なんて話はやめにしよう。
湯船に浸かっている天菜の元に、とあるひとりの生徒が近づく。
「ふぅ...色々あったな、今日...んえ!?」
「ふふふ...また大きくなった?天菜!」
そう言いながら天菜の胸を揉みしだく女子生徒の名は
「もー!結!辞めてよ!」
「ふふふ...これが私の特け...ごぽぽぽぽ」
辞めず揉み続ける結の頭を湯船の中に沈ませる天菜。
流石にやばいと思ったのか解放する。
「ごぼぼ...ぼぼぼ!!
ぶはっ...しぬかと思った...!天菜酷い!!」
「悪いのはそっちでしょ。というかそれより結、半魔族化した?髪の毛も青くなってるし...」
「んあ?したよー?ほら」
湯船から腰部分を出す結。
腰には青い鱗で覆われた大きな尾鰭があった。まるでマーメイドの下半身のような。
それと同時に手のひらを開いて天菜に向ける。
「こっちも。ほら、水かきあるでしょ?」
「わ、ほんとだ」
「天菜はしなかったの?」
「うん、なんか危なかったけど...守ってくれたんだ」
そんな天菜を一瞬驚いた顔をした結が見つめる。
ニヤニヤとした顔つきで。
「ふーん?それ誰なんだろーねー?」
「...ん?なっ、はああ!?」
「にししし!!恋する乙女はいいねー?」
そう言って湯船から上がり身体を洗い始める結。
あとを追って湯船から上がり、身体を洗う天菜。
そんなこんなで風呂をあがり、脱衣所で置かれていた服を着る。
「...この服......」
「ね、思った」
「浴衣......?」
「あるんだ浴衣」
帯を巻いて脱衣所から外に出る。
そこには倒れている風結、裕也、その他男子の姿があった。
「え!?ど、どうしたの!?」
焦った天菜が問う。
一足先に出ていた女子が答えた。
「......サウナの耐久勝負で逆上せたらしいよ」
「...............バカ?」
心底呆れた顔で男子たちを見る。
そんな天菜に向かって風結が言った。
「男の勝負なんだよ......あっ無理頭いてえしぬ」
「...ダサ」
「はあああ!?」
なんてことをした後、男子の復帰を待ち、それぞれの部屋へと戻った。
部屋に戻り、窓際の椅子に座って項垂れてる風結が言う。
「いやー...疲れた。なんか飲み物ない?」
「んー、無さそう...あ、これは?」
そう言った天菜が差し出したのは瓶詰めの白い液体だった。
「...えっち」
「な!?ちがうから!!」
「わーってるよ、てか何それ」
「んーと、ラベルにはミルクって書いてるけど...」
「よし、んじゃ飲むか」
そう言って一気に喉を潤す。
「おぉ...」と感心しながらその状態を見ている天菜。
「っぱー、うま!めっちゃ濃厚...」
「そーなの?私牛乳飲めないからわかんないや」
「ふ、子供には早いぜ...っと、そろそろ寝るか」
そう言って歯磨きを済ませ、ベッドに潜り込む風結。
そんな風結の隣のベッドに入った彼女が言う。
「この世界って結局、なんなんだろうね」
「んあー、一つだけ仮説はあるけど...ま、確定要素がないからな。外に行けたら色々分かりそうだけど」
「それもそっか、明日何するんだろうね」
「さあな、兎にも角にも早く寝ないとな」
相槌をうって眠りにつく天菜。
その横で、月明かりに照らされた右腕と手首に着いている鎖を見つめる風結。
銀色の鎖はピッチが四つ、五つ目が途中でちぎれている。刀でも斬ることの出来なかったのを思い出す。
微かな重みと冷たい感触、鎖のぶつかり合う音を感じる。
白くなった頭髪が視界に映る。
それを見ないように右側を向いて目を瞑る。
慣れない。
自分が自分じゃないみたいだった。
手首に着いた鎖、白くなった頭髪、頭の上には光輪。
そんなことを考えているうちに、夜は明けていた。
「んぅ......あ、おはよお、風結」
目を擦りながら窓際の椅子に腰かける風結を見る天菜。
しかし窓の外を見ている風結から返事は無い。
「風結ー?どうしたの」
ベッドから立ち上がり、風結の元へ近づく。
彼の肩に手を当て、もう一度呼びかける。
が、またもや返事は無い。
天菜が顔を覗き込むと目をつぶり、気持ちよさそうな顔をしていた。
「...ね、寝てる!?」
「んあ!?お、おはよ......天菜」
「ふふ、おはよ、風結」
まるで夫婦のような会話を済ませ、クローゼットに入っている服に着替える。
「こっち見ないで!」と言われた風結は何故かトイレで着替えさせられていた。
「てかこれ...制服だよな」
トイレから出てきた風結が言う。
鏡を見ながらリボンをつけている天菜も同じことを思っていた。
「制服あんまり好きじゃないんだけど...」
「まーまー、いいじゃない」
「これ以外ないし仕方ないか...」
その後、いつも通りの転移魔法で食堂に行き、食事を終わらせた。
変わったことといえば昨日の夜と同じく日本のような食事である事くらいだった。
食事を済ませ、席に座ったまま各生徒が話していると、大きな扉の方が光る。
「まぶし...」「なんだなんだ?」
とザワつく生徒達の視線の先には、王宮の中でも群を抜いて強い6人の
「本日から魔法の使い方を教わる魔導師の方々です。先日魔法鑑定をした時より少なくなっているのはクエストに出かけているからですね。それでは各魔導師の方、自己紹介を」
ミシェルが言う。
それに続いて彼らの右から順に口を開いた。
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