#4 あんま変わんないよな

大きな空間だった。

長いテーブル、綺麗な燭台、贅沢な椅子、豪華な料理...宮廷のレストランと言われれば思い浮かぶままの食堂。


そんな食堂に俺たちクラスのメンバーが並んでいた。


「うおお!?これ食べていいのか!?」

「え、いいってことじゃない...?」

「食べようじゃあ!」


そう言った人物も居れば、怪しむ人物も居た。

それもそうだろう。こんなに非現実的なことばかり起きた上に豪華な食事がいきなり出されたのだから。


「お食べ下さい!転移者様のお口に合うか分からないんですけれど...」


料理人と思われる人物が入口、大きな扉を開いて入ってきた。


「!ありがとうございます!」


そう言うと各々が食べ始める。

もちろん俺達も例外では無かった。


「んー、じゃあまあ食うか」

「え、風結食べるの」

「ナターシャさんが悪い人とは思えんしな」

「むう...それはそうだけど......」


何故か不機嫌そうな天菜を横目に、「いただきます」と両手を合わせて食事を始める。

この世界も箸あるんだ...。

というかこれはマグロ?こっちは牛肉っぽいし。


「旅館のご飯みたいだね」

「お、天菜もそう思う?」

「うん。おばあちゃんちの旅館で食べたのと似てる」

「異世界っぽいけど...飯は日本風?」

「んーそんなことあるのかな。転移者様って言ってたし私たちに合わせてくれたのかも」

「まあそう考えるのが無難か」


そう言うと黙々と飯を食い始めた天菜。

よほど美味しかったのだろう。

実際とても美味しかった。ご飯のオカワリまであった。


......しっかり食べて何が悪いんだよ!!!


とまあそんなこんなで自室に戻った。

最初に転移させられた天菜との部屋。


「...いやこれ...今日からこの部屋で過ごすってこと?」

「...みたいだね」

「いいの!?」

「ん?いいよ?」

「あっはい......ならば俺は窓側のベッド!!」


そう言って飛び込む。

うお!よく跳ねるなこれ...。いいベッドじゃん...。


「はいはい、仕方ないなーもう。お風呂まだなのにベッド入らないでよ」

「はっ...忘れてた」


なんて話をしているとあることに気づく。

なんとこの部屋、お風呂が無いのだ。


「......風呂ってどこ?」

「...たしかに」


なんて話していた、俺たちの部屋の水晶からまた声がする。


『ご入浴の準備が整いました。これより皆様を転送させていただきます。』


盗聴でもされてんじゃねえのか?


なんて思っているともはや既に慣れた転送手段で俺たちは移動する。

移動先はそれぞれ別だった。

俺は脱衣所...周りに男しかいないところを見ると天菜は女子の方に行ったのだろう。


そして脱衣所であることに気づく。


「すげえ!これみんなの名前と風呂の用意置いてあるぜ!」


秋斗が言った。

そう言った通り、俺たちの名前とカゴに入れられた着替えが置いてあった。


「おーす風結...で合ってるか?」

「ん?ああ、裕也ゆうや、合ってるよ。お前こそ裕也か?」

「合ってるよばか」


なんて笑いながら会話したこの男は清海きよみ裕也、高校1年の時から仲の良い友人だ。

こいつも半魔族化したのだろう、見た目が変わっている。

髪色は黒から緑へ、首、右手首、左脚に様々な花が咲き乱れていた。


「これどーなってんの、感覚ある?」


そう言って手首の花弁を掴む。


「ねーよ、お前の鎖と一緒じゃね?」

「引き抜ける?」

「さっきしようとしたけど抜けたそばからすぐ生えてくる」

「あっ抜けるんだ...」


なんて話していると既に脱衣所には俺と裕也、そして数人程になっていた。

急いで服を脱いで浴場へと向かう。


「おお...!」


大理石を基調とした大きな浴場。

女神の像やマーライオンなど、謎の石像も沢山置いてあった。


「すげえ!はいろーぜ!」


そう言って湯をかけてくる裕也に湯をかけかえす。

掛け湯しかしてないのに体力が謎に削がれてしまった。


「あーー...いい湯加減......」

「いやまじでそれ......きもちー...」

「ていうかさ、俺たち半魔族化?みたいなのしたけどあんま変わんないよな実際」

「まあ原型は残ってるな」


なんてことを話しているととある人物二人がこちらに来る。

一人は転移してすぐに見かけた菅野、もう1人はその菅野と仲の良い友人、渡辺わたなべ勇輝ゆうきだった。


「おい、お前」

「何...?」


菅野が大きな体で湯をかき分けながらこちらに来る。

せっかく落ち着いてたのに...。こいつ苦手だし。


「お前!なんでそんなパッとしないヤツなのに天菜たんと同じ部屋なんだ!」

「......へ?」


コイツまじか。

いや、少なからずいるのは知っていた。天菜に好意を抱いている人が。ファンクラブまであるからな...。


それはそれとして...コイツまじか。


「天菜たんの同室は譲れない!!」

「いやそんなこと言われても...」

「変われ!!ちょっと見た目が良くなったからってイキんな!!」

「ひでぇ...いやお前も半魔族化してんじゃん」

「そうさ!ボクも半魔族化で見た目が変わったんだよ!だからボクが天菜たんの横にいるべきさ!」

「...ぶっ飛んでんな......」

「だから!!お前ボクと部屋変われ!!」


...いやお前多分おそらく同じ部屋であろう隣の渡辺の事考えてやれよ...。


そうは思ったがより1層面倒くさくなりそうだったので辞めた。賢明な判断だと思う。


「あ、サウナあるじゃん、裕也行こ」

「おー!いいね」


そうして渡辺と菅野を置いてサウナに入ることにした。

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