#6 分かるッスか?
「僕はシェーン!シェーン・ジェンドゥ!
「ん、私はシア。シア・アルカンシエル。普通魔法は水」
「ちょっとシアちゃん冷たいー!
あ、あたしはキルル・グリッセント!!普通魔法は水特化だよー!よろしくねー!」
「私はナターシャ・クレイモア!よろしくおねがいねー!」
「こんなに半魔族化の検体が...!おっと、失礼。私はアル。アル・パララルペラ。普通魔法は炎特化だ。よろしく頼む」
「俺はソリーフ・ガルガートって名前ッス。普通魔法はー、雷ッスね、よろしくッス」
個性豊かだな...?
まさに味方陣営の幹部、とでも言うのだろうか、そんな人達が並んで自己紹介をしていた。
俺が見たことあるのはナターシャさん。昨日の魔法識別?とやらの時に話した程度だが。
「それではこの後より、4人のグループに別れていただきグループごとに魔導師からの訓練をさせていただきます。では...転移魔法にて、グループ分けと場所分けを致しますね」
そう言うといつもの転移魔法で俺たちが移動する。
いや、いつものとは違い、赤い光に包まれた。
移動した先に居たのは天菜と裕也、そして結だった。
「...良かった、まだ比較的仲の良い人で......」
「陰キャ出てんぞー?」
「うるせえ!」
裕也を軽く叩いて当たりを見渡す。
一言で言うならば草原。地平線が見える、広大な敷地だった。
建物は見当たらない。辺り一面が平らな場所。
こんな場所があったのか。
「君らッスか、よろしくッス」
「あ、ソリーフさん...でしたよね!お願いします!」
頭を下げて言う天菜に続いて俺達も頭を下げる。
「え、そんな大袈裟な...大丈夫ッスよ、
「も、模擬戦!?」
「そッス。ま、模擬戦って言ってもこの空間にいるうちは痛覚が5分の1。攻撃くらってもちょっと違和感のあるくらいな上、傷は一定時間攻撃を食らっていなかったらすぐに治るッス。気にする程でもないッスよ」
「...この空間って現実じゃない?」
「まあそうとも言えるッスね。この空間はミシェル達の固有魔法、
「すご...そんなのも出来るんですね」
「まああれはちょっと例外...って言うか特殊な例なんで覚えてなくてもいいッスよ」
そう言ってポケットに手を入れるソリーフさん。
綺麗な金髪と整った顔つきでこちらを見ているかと思うと当たりを見始める。
「んー、そッスね、まあ固有魔法って言うのは使用する時に詠唱ってやつが必要ッス。
詠唱って言ってもそんなペラペラ長いこと話す訳じゃなくて、
ただその時に込める魔力は固有魔法の種類によって変わるのでそこは自分でコツ掴んでッス」
...つまり
「
...発動はできたのだろうか。
そう叫んだ裕也は右に引っ張られるように吹き飛んで行く。
「ええ!?裕也ああ!?」
「……固有魔法の暴走ッスね。まあよくある事なんで……回収だけするッス」
そう言うと目の前から……消えた。
言葉通り、一瞬にして裕也の飛んで行った方向に行ったのだろう。先程までソリーフさんが立っていた場所から左に向かって、生えていた草が焼け焦げているように一直線に消えている。
……なんて思っていると裕也を肩に担いだソリーフさんが戻ってきた。
「っしょっと。大丈夫ッスか?」
「大丈夫です!すんません」
「いえいえ、暴走もよくある事ッス。次は気つけるッスよ」
「うす!」
「……まあそんな苦労しなくても一瞬で基本的な使い方は分かる方法があるッス」
それを聞いた俺たちは、声を揃えて叫んだ。
「そんな便利なもんあるんすか……」
「はい、これッス」
そう言ってソリーフさんがポケットから取り出したのは小さな4冊の本だった。
ファンタジー世界に出てくるような、魔法書のような、俺たち男の厨二心をくすぐる、そんな本だった。
「「……かっけえ!!」」
裕也と声を揃えて言う。
「ではこれをそれぞれ持つッス。
持ちました?それじゃその状態で
そう言われ、俺たちはそれぞれ本を持った状態で言う。
そう言った途端、持っていた本が体の中に吸い込まれるようにして消える。
「え、は?」
「なんだなんだ!?」
それぞれが困惑している様子を見たソリーフさんが静かに説明を始める。
「それは白紙の魔導書ッス。白紙の状態で固有魔法を使うことで使用者の中に吸収されるッス。
さて、分かるッスか?使い方が」
ニヤリと笑って俺の胸に指を指す。
何を言っているのか、最初は分からなかった。
そんな事を思っているうちに言葉の意味がようやく分かる。
言葉通り、固有魔法の使い方が。
まるで昔から知っていたかのように。
教わらなかった歩き方のように。
気づいたら知っていた話し方のように。
「……分かる」
「!裕也も!?私も分かるようになったよ!?」
「結も裕也も一緒だー!私も分かったよ!」
三人が騒いでハイタッチをしていた。
圧をかけるように、三人がこちらを向く。
風結は?と言わんばかりの表情で。
「はいはい。俺もちゃんとわかってますよー」
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