#3 切れるのかなって
「あ、来た」
風結と天菜が魔法にて移動した先は何も無い、レンガ造りの部屋だった。
ちょうど教室1つ分くらいの大きさのそこにいた桃色の髪の人物が言う。
「やっほー!君たちが転移してきた子ねー?」
「あ、はい。そうです。貴女は……?」
「ん?私?私はナターシャ!ナターシャ・クレイモア。この国の
長い桃髪をたなびかせて彼女が言った。
彼女は魔導師と名乗ってはいたが、ひと振りの太刀を
「それより君、そっちの白髪のほう!よく見せてよ」
「え、ああ、いいですけど……」
ありがと、と呟くと数メートルは先にいた筈のナターシャが即座に風結の傍に近づく。
「はやっ……!?」
「ふむふむ、白い髪……バツ印の光輪……それに手首についてあるちぎれた鎖。その鎖って取れるの?」
「え、いやわかんない……」
風結が手で外そうとするが微動だにしなかった。
ひんやりとした感覚が風結の手に残った。
「んー、じゃあちょっと手を前に出してよ」
「?こうですか?」
そう言って前に出した途端、ナターシャが腰に佩いていた太刀で鎖を切りつける。先程とは別人かのような顔つきで。
甲高い金属のぶつかり合う音がするが、またもや鎖は無事だった。
「うおえ!?」
「ええ!?風結!?」
太刀を納刀したナターシャは先程の優しい表情に戻り風結達に言った。
「ごめんねいきなり。切れるのかなって」
「い……痛くないからいいですけど……」
「それよりこれ……だいぶ硬いね」
「みたいですねー……」
「ていうか半魔族化の人初めて見たんだよ!もっと見せて!」
「え、ああ、いいすけど……」
そうして風結の腕や髪に触り始めるナターシャ。
冷たい目線が風結に刺さる。
「ん?……え!?」
見たことの無い目線でこちらを見つめていた天菜を見た風結が冷や汗を流す。
「ん?どうしたの?」
笑いかける天菜。
目が笑っていないその笑顔は風結をさらに驚かせる。
(な、なにに怒ってんだあいつ……)
「んー、なるほど!魔力量はまず滅茶苦茶増えてるね。私よりもあるよ」
「ええ!?……それって凄いんですか?」
「凄いよ!簡単に言うとスタミナがとっても多いってことだからね」
「なるほど……?」
「まあこれ程の魔力量となると……それこそ魔族だね。君が人間かどうか、それを証明するものはもう何も無い」
空気が変わる。
重く、ずっしりとした空気に。
……そのはずだったが、その空気を壊したのは他でもない風結自身だった。
「え!かっこいいすね……」
「……っぷ、あははは!!面白いね君!いいねいいね!」
へ?とでも言いたげな顔をする風結、そしてそれを見てヤレヤレ、とジェスチャーをする天奈。
そんなふたりを見たナターシャが言った。
「よーし、じゃあ今から
「「!!お願いします!」」
声を揃えてふたりが言った。
それを見たナターシャが、とある魔法を使う。
手のひらの真上にポータルを出現させ、そこから妙な道具を取り出した。
「それは……?」
「これは
「名前ってそうやって決めるんすね……」
「そうそう!まずはそっちの黒髪の子、アマナちゃんだっけ?」
「あ、はい!どうやって使うんですか……?」
ここに手を……と天菜に解説するナターシャを横目に、窓を眺める風結。
否、窓と言うよりは反射している変わり果てた自らの姿を見ていた。
(治んのかな、これ。鎖は別に重くないし動きに支障は無いけど……ジャラジャラうるさいし普通に当たるから邪魔なんだよな。光輪は触れれないし。でもほんのり光ってる?ような……。見た目でいえば人間にプラスでなにか要素が追加された感じなんだろうか)
そんな事を考えていた風結の耳にナターシャの声が聞こえる。
「ん、出たね、名前。固有魔法は……
「それってどうなんですかね?」
「うーん、ま、弱いわけじゃないと思うよ!」
「え!そうなんですか!?ちなみにナターシャさんの魔法は...?」
「ん?あー、私はねー、珍しいものでも無いから期待しないでね?
っと、じゃあフユくん、次してみようか」
窓際にいた風結に言う。
「あ、はい」と返事をし、ナターシャが持っている水晶の前へと向かう。
「ここに手をかざしてー。それで数秒待ってね」
「それだけですか?」
「うんうん」
水晶に映し出された文字は
「うーん...この
そう言ったナターシャに対して「はい!」と返した風結達2人はまたもや同じ魔法で元の場所に戻る。
いや......食堂の椅子に座っていた。
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